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いつ作品を観に行く? 「3回は劇場に足を運ぶ」

――冒頭で本シリーズの自由度についてのお話がありましたが、何か“縛り”はあるのでしょうか。例えば有名なものだと「コナンは涙を流さない」といったポリシーがあるかと思いますが。

 ただ、そう思って臨んだ『絶海の探偵』の出来上がりを見たら、コナンが泣いているように見えるシーンがありまして(笑)。ただ、公式の発表ではあれは汗ですから、攻めつつも守るべきところは守っているように感じます。脚本を書くうえでは「これはダメ」というものは特にはありません。ただ、「名探偵コナン」は現在進行形の作品ですから、青山先生がこれから描こうとしているものと齟齬があってはいけません。その部分に関しては、ご本人がきちんとチェックして下さることでクリアできているように思います。

――その上で毎回劇場版で原作とリンクする新事実を入れてくるのは、素直に凄いですね。

 一番攻めているのは青山先生ですよね。本当にポンッと入れてきますから(笑)。きっと原作と劇場版の両方のスケジュールを計算しながら「いまここまでサービスしても大丈夫」とジャッジしているのではないでしょうか。

――本シリーズは年々ファンからの期待値が上がっているかと思います。櫻井さんはプレッシャーを感じられていますか?

 あまりないというよりも、感じている暇がないのが正直なところです。いま取材を受けている段階で、もう次の作品を書いている最中ですから。ただ、反響は気になるので僕も劇場に観に行くようにはしています。公開当初は僕が行ったらお邪魔になってしまうと思うので、ゴールデンウィーク後に一回、上映が終わりそうな秋口にもう一回、その間にもう一回と大体3回は劇場に足を運び、観に来て下さったお客さんの顔を見ています。(はじめから読む:最新作公開目前! 劇場版「名探偵コナン」脚本家が語りつくすヒットの裏側「青山先生の説明にスタッフが衝撃を受けていて…」

櫻井武晴(さくらい・たけはる)

1970年生まれ。1993年、東宝株式会社に入社。映画の企画やプロデューサー業務に従事したのち、在職中に第一回読売テレビシナリオ大賞で大賞を受賞。2000年に退社してからは脚本家として『相棒』シリーズ、『科捜研の女』シリーズ、『名探偵コナン』シリーズなどで活躍。

『名探偵コナン 隻眼の残像(せきがんのフラッシュバック)』

2025年4月18日(金)から全国ロードショー
©2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会
https://www.conan-movie.jp/2025/

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2025.04.11(金)
文=SYO