昭和史を長年研究してきた私から見て、近年、肌寒くなるような現象が見られる。
たとえば二〇二四年の東京都知事選で小池百合子知事に次いで票を集めた石丸伸二氏が「ニューウェーブ」と話題になった。だが、彼の論法と居丈高な口ぶりは、かつての陸軍エリートを彷彿とさせる。新党を立ち上げるにあたって「政策」「理念」を提示せず、「実務能力の有無」だけを候補者に求めるという姿勢は、「戦略」「軍事哲学」を持たず「戦術」のみに執心した旧軍そのものである。
また、兵庫県の斎藤元彦知事が県政における公私混同やパワーハラスメントが露見して議会で不信任決議案が可決され、失職した。非を認めない斎藤知事の姿勢はさらなる猛烈なバッシングを呼んだが、SNS等で真偽不明の情報が流れだすと一気に情勢は逆転した。結局、斎藤知事は出直し選挙で再選されたが、「正義」と「不正義」がポピュリズムによって簡単に逆転するありさまは、五・一五事件の首謀者らを裁いた軍法会議とも酷似する。
近現代史をしっかり学んでいれば、これらの構図に容易に気づくことができる。同じ失敗を繰り返さないためにも、近代日本が歩んできた道に、今一度、目を向けてみたい。
その理解を助けるために、「地下水脈」という視点から、反体制運動の歴史を紐解いてみよう。
本書刊行までに栗原俊雄氏(毎日新聞編集委員)、西本幸恒氏(文春新書編集長)の多大な尽力をいただいた。深く感謝したい。
「はじめに 反体制運動を「地下水脈」で読み解く」より


右翼と左翼の源流 近代日本の地下水脈II(文春新書 1487)
定価 1,056円(税込)
文藝春秋
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2025.04.02(水)