過去の悔しさをバネに

――そうなるとお芝居をすることがどんどん楽しくなるのでは?

 楽しいです! だからこれまでももっと研究して、動きの面に関しても頑張りたかったと思います。過去の舞台を思うと、悔しさしかないです。

――染五郎さんと踊った『三社祭』についても「悔しい」とよくおっしゃっていますよね。

 染五郎さんとは『弥次喜多』つまり『東海道中膝栗毛』シリーズで子どもの頃から一緒に出させていただいていましたが、それはたくさんの先輩がいらっしゃる中でのこと。それが『三社祭』では幕が開くとふたりしかいない。その重みを初めて感じた舞台でした。いつかリベンジしたいです。

当たり前ができる大人になりたい!

――怠惰な自分に対する反省を経て目指すところは?

 基本的な、当たり前のことがきちんとできる人になりたいです。とにかくもっと大人になりたい。今勤めさせていただいている図書之助はとても精神的に大人だなと感じます。そういう人に憧れます。

――本格的な稽古に入る前、図書之助について「こんな人がいるのかと思うくらい純粋」と人物像について話していましたが、実際に演じてみてさらに思ったことはありますか?

 キーワードとして浮かび上がったのは潔さです。図書之助、本当にかっこよすぎます。

――どうやら『天守物語』で得たものは個人としても大きいようですね。

 これまでにない出会いで、すごくありがたいです。そしてこの「ありがたい」という気持ちを素直に思える人になりたいです。

――これまたシンプルですね。

 シンプル、大切です。結局何に対しても、ごく当たり前のことをちゃんと頑張れるってことが大事なんだと思います。だから頑張るしかないです。そう、頑張ります。

 “なりたい自分”の輪郭がよりくっきりとし始めた様子の團子さんは現在二十歳。團子さんがBTSのVさんのファンであることは有名ですが、その理由のひとつが「次元を超えるパフォーマンスを見せてくれる瞬間があるから」というもの。そしてそれは「歌舞伎の名優の演技にも通じる」ことなのだそうです。

 公私ともに相通じる要素を持つ「好き」と「憧れ」。そこに向かって「頑張る」という團子さん、そのシンプルな言葉が実体験を伴い説得力を伴って響き始めた2024年なのでした。

十二月大歌舞伎

2024年12月3日(火)~26日(木) 休演日:11日(水)、19日(木)
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/882