この記事の連載

◆一楽の「特製四川マーボー豆腐」

 最後は、横浜市に根を張って数十年、横浜中華街をくまなく捜査する「麻婆刑事(デカ)」こと、公務員X氏が登場。平日ランチにディナー会食に、休日の家族の集まりにも愛用する“一生食べ続けたい麻婆豆腐”、しかも裏技的なおいしい食べ方も指南してもらいました。

 一楽は「炭火焼きチャーシュー」で有名な広東料理店で、「季節のメニューなど、何を注文してもおいしい」とX氏。

「アツアツに熱した土鍋で、ジュージューと音を立てながら麻婆豆腐が卓上に運ばれてきます。ひと口含むと辛さも痺れもあるのですが、見た目ほど強烈ではなく実はバランス型の味付け。豆腐をおいしく食べる料理である“麻婆豆腐”の基本的路線がしっかり守られているのが大きなポイントです」

 豚肉で作った肉みそと豆腐を豆板醤で煮込んでいて、調味には火鍋に使う薬膳タレもプラス。そのため、深みとコクを感じる重層的な辛さが楽しめます。有名な店でも「塩」がキツくてガッカリした記憶があるというX氏だが、ここではそんな心配も皆無。トガった辛さはなく、しっかりと旨みを感じられます。いい意味で万人向けの味わいだから、ごはんとの相性も抜群。

「この店ならではの楽しみ方もぜひ。名物料理のひとつ『炭火焼きチャーシュー炒飯』を注文して、ぱらりふわっと仕上がった炒飯に熱々の麻婆豆腐をかけ、“セルフ麻婆豆腐炒飯”として楽しむのもまた一興です」

 ラー油と花椒がきいた「特製四川マーボー豆腐」とは別に、うんとマイルドな辛さの「広東風マーボー豆腐」もあるので、小さなお子さんと一緒に訪れるときは広東風でマーボーデビューを飾らせるのもいい体験になりそう。

一楽(イチラク)

所在地 神奈川県横浜市中区山下町150
電話番号 045-662-6396
営業時間 11:30~15:30(L.O.14:30)、17:00~21:30(L.O.21:00) ※土・日曜・祝日のランチは~16:30(L.O.15:30)、金・土曜のディナーは~22:00(L.O.21:00)
定休日 月・第3火曜(祝の場合は翌休)
アクセス みなとみらい線元町・中華街駅より徒歩5分

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●教えてくれたのは……

「ホテルニューグランド」副総支配人・谷口謙一郎

東京都生まれ。「帝国ホテル」「ウェスティンホテル東京」などで、マーケティング・広報などを歴任。現在は横浜のクラシックホテル「ホテルニューグランド」で副総支配人を務める。無類の中華料理好きで、特に「ウェスティンホテル東京」時代はホテル内のレストラン「龍天門」から続々とヒットメニューを提案。現在は都内から横浜に通勤しながら、横浜中華街のみならず、市内の中華料理店のパトロールに余念がない。


ライター・嶺月香里

東京都生まれ。横浜中華街の1年を通した連載を手がけるなど、中華街を取材し続けて10年以上。老舗の名物はもちろん新店にも積極的に足を運び、中華街の深淵を日々探索中。酒と肴と動物性たんぱく質が主食で、ウナギが大好き。CREA WEBで「教えて! ウナギ大好き、ウ大臣」のコラムをあげている。食以外では「温泉」と「恐竜・鉱物」がライフワーク。


食いしん坊・公務員X

愛媛県生まれ。暮らしも仕事もすべてが横浜駅~横浜中華街付近の50代前半公務員。持ち前の食いしん坊&調べ尽くさずにはいられない気質から、中華街全域の調査にも余念がなく、その粘り強い姿勢を「横浜(ハマ)の中華街刑事(デカ)」と呼ぶ者も。精緻で豊富な知識は、都内の食通から情報を求められるほど。ときには「とんかつ」「デパ地下」「アニサキス」などを追っている。

次の話を読む横浜中華街の賢者おすすめ 進化系麻婆豆腐【3選】 豆乳から作る出来立て豆腐、“白くて辛い”逸品も登場!

2024.10.09(水)
文=嶺月香里
写真=鈴木七絵