この記事の連載
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白い髪には口紅が映えるし、洋服選びも楽しくなりました。
その舞台が終わったあと、NHKの『ためしてガッテン』に出演することになりました。森光子さん、八千草薫さんと交代で出るのですが、私の頭はまだベリーベリーショートで、しかも白髪。観てくださる方をびっくりさせてもいけないと思ったので、
「カツラをかぶりましょうか」
と相談してみたら、スタイリストさんが、
「ダメ。そのまま出てください」
「エッ、白髪の坊主頭で?」
「いいんです。おしゃれで素敵だから」
「あらそう、それならこのままで」
と、あっさり決めました。NHKには視聴者から、「草笛さんの白髪、どういう心境の変化ですか」とお手紙が来たらしいです。実は以前から、染めるのをいつやめようかしらと考えていたので、ちょっと踏ん切りをつけただけでした。
それを機に、黒く染めるのはやめました。六十九歳のときです。すると気持ちが解放されて、とっても楽になりました。もう、ウソも隠し事もない自分です。「素のままでいいんだわ」と気づいたら、「何でも来い!」って心境ですよ。
白い髪には口紅が映えるし、洋服選びも楽しくなりました。何色の服でも合うし、特に明るい色が似合うのです。黒と茶色の組み合わせが好きだった私が、鮮やかなブルーやピンクを着るようになりました。白い髪は女性を華やかに見せるし、気持ちまで晴れやかにします。
2024.09.20(金)
文=草笛光子
写真=文藝春秋