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自然体が一番

 以前は、白髪が目立つ年になると染める女性が多くて、「どうしてみなさん、染めちゃうのかしら」と残念に思っていたのですが、最近はグレーヘアの魅力が注目されるようになってきました。自然体が一番なんでしょうね。

 というわけでずっと真っ白だった私の髪ですが、なぜかこの数年、黒い毛が生えてきました。私は何事もいいほうへ取る性格ですから、「黒いのが出てきちゃって、やあね」ではなく、「黒いのが出てきたら、上手に使えばいいんだわ」と考えています。

 白いところに黒が混ざると、濃淡やグラデーションを出せます。ウェーブをつけたら、髪の毛が流れている筋を見せられます。真っ白なだけだと、ぼやけて毛筋は見えませんよね。綿菓子をかぶっているみたいですから。なので「あ、神様がくださったんだ」と思っているのです。

 でも、なぜこの年になって、黒い髪が生えてきたのか。トーク番組でカメラに向かって、「どうして黒くなるのか、どなたか教えてください」とお尋ねしてみたのですが、回答はありませんでした。

 確実なのは、髪を染める薬品を使わなくなったおかげで、頭皮が健康になったことでしょう。あとは、ずっと前からの習慣で、アミノ酸を飲んでいるせいかしら。髪の主成分は、アミノ酸だそうですからね。夏などは水分不足が怖いので、夜はお湯に粉末をひとさじ溶いて、枕元へ置いて寝ます。トイレで目が覚めたとき、少しずつ飲むようにしているのです。

 白髪は、私を自由にしてくれました。だけどいい気なものでね、髪の毛だって自由になりたいんです。私に聞いてからにすればいいのに、知らん顔して生えてきますからね。でも面倒を見ていないから、白くなったり黒くなったりしても文句が言えません。「もう勝手にしなさい、頭の上で」って感じなのです。

 若返っていると言われればそうなのかもしれませんけれど、上手くいかないものですね、自分の髪なのに。

きれいに生きましょうね 90歳のお茶飲み話

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2024.09.20(金)
文=草笛光子
写真=文藝春秋