この記事の連載

1980年代後半の韓国の映画界

「大変難しい質問ですね。私が映画界に入ったのは1980年代後半で、その当時は、『ソウルの春』のような歴史を扱う映画は、作るのがなかなか難しかった。というのも、検閲などもあったりして大変だったんです。でも2000年代あたりから、創作の自由が認められ、だんだんと緩和されていくようになりました。

 そうなると、近現代史におけるシビアな歴史を扱う作品というものも作ることができるようになりました。今の韓国の映画界には、80年代90年代の民主化運動に関わった人たちが一定数いますので、その人たちによって映画界が動いているという部分もあるんです。『ソウルの春』の企画をされた代表が携わっている作品には、近現代史を見つめなおす作品がたくさんあります。

 こうした映画がたくさん作られる背景には、映画監督の中に、一定数、社会的なテーマに対して関心を持っている人が、ほかの国よりも多く存在しているということが関係しているのかなと思います」

» 後篇を読む

映画『ソウルの春』

2024年8月23日(金)新宿バルト9ほか全国公開
配給:クロックワークス

【STORY】1979年10月26日、独裁者とも言われた大韓民国大統領が、自らの側近に暗殺された。国中に衝撃が走るとともに、民主化を期待する国民の声は日に日に高まってゆく。しかし、暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官(ファン・ジョンミン)は、陸軍内の秘密組織“ハナ会”の将校たちを率い、新たな独裁者として君臨すべく、同年12月12日にクーデターを決行する。一方、高潔な軍人として知られる首都警備司令官イ・テシン(チョン・ウソン)は、部下の中にハナ会のメンバーが潜む圧倒的不利な状況の中、自らの軍人としての信念に基づき“反逆者”チョン・ドゥグァンの暴走を食い止めるべく立ち上がる。

監督:キム・ソンス
脚本:ホン・ウォンチャン、イ・ヨンジュン、キム・ソンス
出演:ファン・ジョンミン、チョン・ウソン
イ・ソンミン、パク・ヘジュン、キム・ソンギュン、チョン・マンシク、チョン・ヘイン、イ・ジュニョク
2023年/韓国/韓国語/142分/シネマスコープ/5.1ch/字幕翻訳:福留友子/字幕監修:秋月望
原題:서울의 봄(英題:12.12: THE DAY)/G/配給:クロックワークス
© 2023 PLUS M ENTERTAINMENT & HIVE MEDIA CORP, ALL RIGHTS RESERVED.
公式HP:https://klockworx-asia.com/seoul/
映画公式X:@19791212theday

次の話を読む「私が関心を持つのは“危機に陥った人”」映画『ソウルの春』キム・ソンス監督が気が付いた1980年代の“思い込み”

2024.08.09(金)
文=西森路代