さまざまなジャンルで活躍する加藤和樹。前回に続いて、これまでの活動を振り返る2回目では、現場で学んだ自身の役割について、そして、吟遊詩人を演じる新作ミュージカル「レディ・ベス」に懸ける意気込みを、クールに語る。

常に忘れない、スタッフへの感謝の気持ち

――以前、山奥で撮影された映画『ヴァンパイア・ストーリーズ』の現場にお邪魔させていただいたとき、ちょっとした待ち時間に、加藤さん自身がコンビニで買ってきた栄養ドリンクを差し入れされていましたよね。その姿を見て正直驚いたんですが……。

 (笑)。役についてもそうですけれど、自分の役割って絶対あるんですよ。自分が主演の作品のときは必ずカンパニーの中心にいなきゃいけないと思いますが、年下だったら先輩に甘えさせてもらいます(笑)。いちばん変わらないのは、自分たち俳優はスタッフさんがいて成り立っているという前提。そこに対する感謝の気持ちは忘れてはいけないと思う。「みんな疲れているから、甘いものや栄養ドリンクがほしいだろう」とか、現場のことは現場にいる人間しかわからないんですよ。だから、そういうときは合間をみて、買いに行きますね。スタッフさんは現場を離れられないですからね。

――さて、近年は舞台に立つ回数が増えている加藤さんですが、2009年に主演された「罠」が大きな転機になったかと思います。

 ストレートプレイであり、海外の戯曲。これって、本当に芝居だけが求められるものなんですよね。初主演の舞台だったし、2時間出ずっぱりで喋りっぱなし。初演のときは、なんでこんな苦しいことをやらなきゃいけないんだって、役者やめたいと思うぐらい追い込まれました。ダニエルという役の中でも追い詰められる設定があって、人間不信になりましたね。そんななか、作品に評価をいただいたこともあって、なんとか立ち上がることができた。再演のときは自分も年齢を重ねて、芝居も楽しくなっていたし、演出家も僕以外のキャストも変わったことで、どこか新しい気持ちになれた。初演に比べ、ダニエルの心情の描き方が変わったことも大きかったですね。

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2014.03.21(金)
文=くれい響
撮影=山元茂樹
スタイリング=立山功