春から夏の海底に描かれるミステリーサークル
4~7月の奄美大島の砂地の海底にはミステリーサークルが現れるのをご存じですか?
それは奄美大島の沖合、水深10~30メートルの砂地の海底に、小潮~大潮にかけて作られ、大潮前の中潮のときが最もきれいなサークルが見られる砂の造形物。直径は約2メートル、溝とウネが連続する同心円の中央に、放射状に波模様が描かれていて、ちょっとしたサンドアートのようにも見えます。
これは30年ほど前に発見されたのですが、「誰が? どうして?」と、謎に包まれたままでした。それが2011年、ついに判明したのです。
その正体は、体長10センチほどのアマミホシゾラフグのオスがせっせと築いた産卵床。
オスは産卵床が完成したら、少し離れたところでメスを待ちます。めでたくカップルとなり、サークルの中心でメスが産卵すると、オスは卵を守ることに専念します。管理されなくなった産卵床は、すぐに崩れてしまうそうです。
産卵床は砂地にあるため、砂を巻き上げないよう中性浮力が取れる中級以上のダイバーならば、実際に潜って観察することもできます。ちょっとトボけた顔のアマミホシゾラフグと美しい幾何学模様の産卵床は、春から夏にかけての海のハイライトです。
ちなみに、アマミホシゾラフグは米国のニューヨーク州立大の国際生物種探査研究所が選ぶ、2015年の「新種トップ10」に選ばれたそうです。
ダイビングサービス ブルーゲイト
2024.05.04(土)
文・撮影=古関千恵子