御前会議が始まると、紫宸殿の門は内側から閉ざされ、鍵がかけられてしまう。
何があっても、外側からこの扉を開く事は不可能だし、会議が終わるまで、この扉が開かれる事はないのである。
自分が妨害するまでもないと言いたいのだろう。路近はニヤニヤとしながら腕を組んで、高みの見物を決め込んだ。
「紫宸殿に、この私が入れないだと?」
そんな事はあるまいと、しかしさらりと言い切った若宮は、不安そうに目を見交わす門番の間を抜け、門扉の前へと立った。
「開けよ」
はっきりとした、若宮の声が響いた瞬間だった。
間をあけず、すぐさま門扉の向こう側で、大きな鍵が解錠する音がした。
大きな目をさらに丸くした路近を無視して、若宮がこちらを振り返る。
「さあ、付いて来い」
その言葉が、自分に向けられたものだと雪哉が理解したのとほぼ同時に、紫宸殿の扉は開かれたのだった。
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文藝春秋
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2024.04.15(月)