CREAリニューアル新装刊、「秘密のパリ」特集にちなみ、本コラムでも“パリの空気を感じられる東京のレストラン”を4回連続でご紹介します。19世紀の美食家、ブリア・サヴァランが「ふだん何を食べているのか言ってごらんなさい、そしてあなたがどんな人だか言ってみせましょう」と『美味礼賛』に書いたように、食は人を表すもの。パリの人のキレイをつくる、パリの食にフォーカスをあててみます。スペシャル企画として、各レストランから特別プレゼントも! ぜひご応募ください。


最先端のフランス料理を味わえるフレンチファインダイニング

マンダリン オリエンタル 東京「シグネチャー」
メニュー名:ランチコース「ル モンド」

冷前菜「フォアグラのコンプレッション 梅干のピュレとジュレ・ビーツ」。

 “パリシリーズ”第3回目では、最先端のフランス料理を味わえる「シグネチャー」をご紹介します。こちらは東京・日本橋のラグジュアリーホテル、マンダリン オリエンタル 東京の37階に位置するフレンチファインダイニング。ピエール ガニェールが率いるマンダリン オリエンタル 香港の2ツ星レストラン「ピエール」のエグゼクティブ シェフだったニコラ・ブジェマ氏が2013年6月に2代目料理長に就任して以来、以前にもまして料理に磨きがかかり、マンダリン オリエンタル 東京のなかでも一番勢いのあるレストランです。

 ブジェマシェフのお料理を初めていただいたのは、昨夏のこと。トマトのテリーヌの上にかるく炙ったイワシのマリネをのせた前菜は、イワシのほのあたたかい温度や脂の溶け方まで緻密に計算されていて、その完成度の高さにハッとさせられました。メインの肉料理は、プレゼンテーションはモダンでありながらソースは古典的。素材の旨味が凝縮されたソースはフランス料理の醍醐味ですが、決して重くなく、体にスッと染みわたります。フランスの2ツ星や3ツ星レストランの料理を思い出させる風格です。

日中は自然光がたっぷりと注ぎ込み、夜はきらめく街のスカイラインを楽しめる店内。

 フランス料理は、かつては重いものと思われていましたが、パリの最近の星付きレストランの料理は、重くなく、美しく、素材の美味しい味だけを抽出したものです。私はそんなお料理をいただくと、「人が“美味しい”と感じる要素だけを慎重に引き出して料理にする一流シェフの仕事は、被写体の魅力だけを切り取って写す、一流カメラマンの仕事にも似ているかも!?」と思ってしまいます。

 最高の素材の、最高の部分だけが引き出された料理。それを食べて、気分がよくならないわけがありません。“キレイ”になれないわけがありません! 土日祝日のランチが7,000円から、平日は5,500円から(ともに税込・サ別)と、お値段はなかなかのものですが、奮発しても本物の確かな手応えがほしい! という日には、「シグネチャー」は大変おすすめです。

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2014.02.21(金)
文・撮影=小松めぐみ