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◆『不適切にもほどがある!』の阿部サダヲ

コンプラ無視の暴言キャラでも嫌われない、阿部サダヲを見逃すな!

 脚本・宮藤官九郎×主演・阿部サダヲのゴールデンコンビ(この言い回しも古い)のドラマで、昭和のおじさん、小川市郎(阿部サダヲ)が令和にタイムスリップしたら? というSF要素の入ったコメディー、金曜ドラマ『不適切にもほどがある!』。

 突飛な設定にもかかわらず、コンプライアンス遵守にがんじがらめになっている令和の人々を完全に否定するのではなく、昭和のおじさんが不適切発言をしながらも、疑問をガンガンぶつけていくという形で、ドラマ内の令和の人間のみならず、現実の視聴者をも巻き込んで考えさせるうまいつくりになっていて、毎週話題を呼んでいます。

 昭和のスケバンスタイルが似合う市郎の娘役の河合優実さんや、あるアイドルに憧れすぎるあまり自分をムッチと呼ばせているムッチ先輩(磯村勇斗)、令和から昭和へやってきて、昭和の性差別やセクハラの実態を研究しようとしている社会学者の向坂サカエ(吉田 羊)などなど、すべてのキャラクターが濃くて面白いのですが、それでもやはり注目したいのは主演の阿部サダヲさん(以下敬称略)。

 宮藤官九郎さんとは舞台にテレビに映画に、過去に数え切れないほどタッグを組んできて、長年バンドでも一緒に活動しているからか、まるで呼吸をするように自然にイキイキと市郎を演じています(そう見えます)。

 また、犬島 渚役の仲 里依紗さんとは、掛け合いの間もバッチリ。

 市郎は野球部顧問で部活では生徒に水も飲ませずケツバット、娘を「メスゴリラ」とののしり、セクハラという言葉も概念も知らない昭和のオヤジのカリカチュアとして走り回っています。

 初めは昭和と令和の様々な違いに驚いていたけれど、スマホの扱いも意外になじみが早く、「ググる」の意味も覚えて見事に使いこなし、令和で出会った渚と昭和の自分の娘の貞操を守るため(?)に時代を超えて奔走。

2024.02.24(土)
文=斎藤真知子