多くの視聴者を泣かせるノリさんの演技力
特に、家族と揉めて口喧嘩した後、ひとりになった時の、ぶつける場のないやるせなさ、「嬉しい」「悲しい」という形容詞一言では表せない気持ちの表情や仕草が、ノリさんは抜群に上手い！ と改めて感動しました。
1話で瞳と揉めたあとの「ふぅ～ほほっ」とため息をついたところや、5話のラストで、英会話の勉強をしているところに話があるとやって来た瞳に、「なに？」と聞くあたりのリアリティーがすごい。
そういう場面でのリアルさが、多くの視聴者を泣かせている理由だと思います。
そもそもノリさんは演技が達者なのですが（三谷幸喜氏も以前からラブコールを送っている）、時間の自由がきかないことを嫌ってなのか、撮影が数カ月にわたるドラマの出演は過去にはほとんどありませんでした。しかも余命宣告された父親、ともすると“泣かせること”が目的になってしまいそうな役を引き受けたなんて、正直驚きでした。
なぜなら筆者は、いつでも明るく楽しく軽やかに、という姿勢を、ノリさんからは常に感じているからです。真面目なことを深刻な顔して言うのはちょっと照れくさい。暑苦しく語るより、なんでもちょっとふざけて笑いに転換して表現したい。でも真面目なこと、熱いことを考えていないわけじゃない。そんな印象を受けています。
きっと作り手も、そんなノリさん自身の魅力を最大限に引き出そうとしているんだな、と思います。ノリさんも、体が弱っている様子や、娘への複雑で切ない思いなど、辛い場面もしっかり演じきっていて、120％期待に応えている。
だからこそ、ベタベタなお涙ちょうだいのラストには絶対にならないハズ。雅彦がどんな人生のしまい方をするのか、見届けたいと思います。
『春になったら』
毎週月曜22時放送（関西テレビ）
https://www.ktv.jp/haruninattara/
Instagram：@haru_ktv
2024.02.24(土)
文＝斎藤真知子
