■板谷由夏『ブラックファミリア』/初主演抜擢の流れで射止める
板谷さんが連ドラ初主演となった『ブラックファミリア』(10月5日スタート/木曜23時59分)は、娘を失った主婦を主人公とした復讐ミステリー。板谷さん演じる主人公の家庭は幸せいっぱいだったものの、ある日、女子高生の次女が謎の死を遂げたことで生活は一変。政財界に影響力を持つ実業家が娘の死にかかわっていることを知り、復讐のために家族総出で別人になりすまし、セレブ一家に近づいていくというストーリーです。
アカデミー賞作品賞を受賞した韓国映画『パラサイト 半地下の家族』(2019年)を彷彿とさせるダークな空気感を漂わせる本作。板谷さんは胸のなかで怒りをマグマのようにたぎらせながら、それをおくびにも出さずにセレブ一家に家政婦として潜入していく復讐の鬼を好演。コメディからシリアスまで、硬軟さまざまな役を演じて来た板谷さんならではの鬼気迫る憑依演技は必見です。
ところでこの作品は、2017年の『ブラックリベンジ』、2018年の『ブラックスキャンダル』に続くブラックシリーズの第3弾。『ブラックリベンジ』は木村多江さんが民放連ドラ初主演で、『ブラックスキャンダル』は山口紗弥加さんがドラマ初主演で話題を集めていました。
つまりこのブラックシリーズは、キャリアを重ねた女優を初主演に起用する流れできていたわけですが、そんなシリーズの第3弾で板谷さんが主役の座を射止めたということなのです。
板谷さんは昨年も『家庭教師のトラコ』にレギュラー出演するなど、さまざまな日テレドラマに出演してきましたが、注目すべきはドラマ以外の貢献度。板谷さんは日テレ系の報道番組『NEWS ZERO』に2007年から2018年まで約11年間もの長期に渡ってキャスターとして出演していたのです。彼女が初主演を飾ったのが日テレドラマだったのは、偶然ではないでしょう。
――これまでは、ドラマ主演する俳優たちの多くが20代でその座を射止めてきました。ですがこれからは、今回紹介した小池さん、木南さん、板谷さんのように30代、40代から役者としてのキャリアハイに突入するケースも増えていくのではないでしょうか。
2023.12.12(火)
文=堺屋大地