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母の死後、日記を見つけて受けた衝撃

 死後に見つけた母の日記に、兄と、当時兄が結婚していた女性と一緒に、外食に出かけたことが綴られていた。そこで兄に鰻を食べさせてもらって感激したと書いてあった。あの子が私に鰻を食べさせてくれるなんて、信じられないことだとうれしそうに書いていた。素晴らしい息子だとあった。

 私にはそれが衝撃だった。兄のために奔走した時間が、苦労が、鰻で清算されたのだろうか。兄と母の関係とは、そこまでアンバランスなものだったのか。残りのページは兄の借金の返済に関する記述ばかりだった。

©aflo
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 幼い頃は病弱で心配をかけたが、私は母を一度として苦悩させたことはなかったはずだ。少なくとも、成人してからは。むしろ私は、母をサポートしてきた。いつも電話の相手になって、母を応援し続けてきた。それなのに、母の日記に私に関する記述は一切ない。唯一、表紙をめくった最初のページに、私の携帯の番号が書いてあっただけだった。

 母にとって私は、そのような存在だったのだろう。最後の最後に頼ることができる相手。ここに連絡をすれば声を聞くことができる相手。それとも、それ以上の存在だったのだろうか。

2023.11.22(水)
著者=村井理子