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果歩の愚かさを肯定したい

――「抱えているものがある」というワードがひとつ挙がりました。中井さんから見た果歩は、ほかに言葉にするならどのような人物という印象でしたか?

 抱えているものもあるけれど、それを抱えているという自覚はない子なんだろうな、とすごく思っていました。ただ目の前の物事を一生懸命にやっていて、今をどう生き抜くかに真剣にフォーカスしているようなイメージと言いますか。

――芯の強さを感じるキャラクターですよね。そこも中井さんご本人とリンクするところなのかなと思いました。

 私、そういう感じです……(笑)。この作品のストーリーだけを聞くと、果歩はちょっと流されやすいのかな、弱いのかなと思う方もいるかもしれないんですけど、全然そんなことはなくて。果歩の強い部分、芯がある部分があるからこそ、観てくださる方にもいろいろ多くのものを感じ取ってもらえる作品じゃないかな、と思っているんです。

――台詞のない気持ちの表現などは、演じるにあたり特に難しそうにも感じましたが、撮影するときに迷ったり悩んだりしたところはありましたか?

 この映画に関しては、実はあまりなかったんです。当て書きということもあって、最初から私も果歩に寄り添えていたから、感情について疑問に思ったり、腑に落ちない部分はありませんでした。

 平波(亘)監督からは「果歩の愚かさを肯定したい」というお話をされました。かわいそうな女の子の物語じゃない、というのは私も監督と共通した想いでした。観ている方に同情という感情を持ってほしくないという気持ちを持って、撮影に臨んでいました。

――初主演で、なかなかそこまで共鳴できる作品に巡り合うことは珍しいですよね。

 本当に恵まれていたと思います! 初主演映画だからという気負いみたいなものも、まったくなかったんです。果歩という主人公像が、周りの環境に影響されて落ちたり・上がったり・変わったり・強くなったり・弱くなったりする人物で、自分がどう、ということじゃなかったのが大きかったのかなと思います。だから「初主演だから、私がしっかりしなきゃ」という思いは、いい意味でまったく持たず現場にいられました。

2023.10.03(火)
文=赤山恭子
写真=榎本麻美
ヘアメイク=SHIO
スタイリング=粟野多美子