●「ダイバーシティーを意識していろんな人を出してみよう」
――このマンガを読んでいて、もちろん魅力的なホテルと出合えることにわくわくしますが、キャラクターそれぞれが異なる恋愛観や人生観を持っているのも惹かれるポイントですね。史香も若葉も、おひとりさまの自由や贅沢を愛おしんでいるけれど、実は心密かに想う誰かがいたりして。これからの展開も楽しみです。
マキ 『ティファニー』は仲良しの女性4人のお話でしたが、今回はダイバーシティーを意識していろんな人を出してみようかなと思ったんですね。
モリッシーこと森島はゲイです。彼や友人たちが、いまのような時代でも理解されない場面に遭遇するエピソードは、私の実体験なのですが、驚きますよね。ゲイの人たちも私たちと同じような感性を持って暮らしているわけで、ホテルライフを楽しむという趣味を通して、さまざまなバックグラウンドや個性を持った人たちが通じ合っていくさまを描けたらなと思っています。
もしかすると、女性以上に、男性がおひとりさまを楽しむのはハードルが高いのかも知れない。だから、森島の満ち足りた感じを通して、勇気を持ってくれる人がいたらうれしいですね。
――一回一回は、先にホテルを決めて取材し、ストーリーはその後から作っていくという流れですか。第3巻の分の取材はもうすべて終わっているとか。
マキ 『ティファニー』でもそうだったんですが、「話が進んでいくとこういう展開になるから、エリアはこの辺がいいかな」とか、『おひとりさまホテル』なら「単行本になったときのバランスを考えたらあまり関東のホテルに集中しない方がいいな」とか、そういう土台はあらかじめ決めておいて、ストーリーを合わせていく感じです。
この前は、第2巻にもちらっと出てくる女性上司の持田さんの回を描きました。第3巻に収録されると思います。彼女は、車で行けるエリアの温泉地が好きという設定です。まだ保留ですけれど、ゆくゆくはビジネスホテルやデザインに凝ったラブホテルなども、脇役などを増やしつつ描いてみたいなと考えているところです。
私はずっと「おひとりさまホテル最高!」と思ってきたのですが、最近は、そのよさを知っているからこそ、家族や友人、恋人など誰かと泊まるのもより幸せな気持ちになったりするなと感じるようになってきました。
――ただ、最近はホテルの宿泊費が高騰していて気軽に泊まれないという声も聞こえます。
マキ そうなんです。ステキなホテルに気軽に泊まって自分を癒やしてほしいなという気持ちで始めたものが、シティホテルも結構なお値段がするようになってしまって……そこはジレンマですね。ただ、いただく感想でも「おひとりさまホテルをやってみたいけど、勇気がなくて」とか「子どもが小さくてできないけど、いつかやってみたい」というのが結構あったので、読者に疑似体験的に楽しんでもらうのもいいかなと思っています。
2023.09.16(土)
文=三浦天紗子
撮影=清水 隆
撮影協力=代官山 蔦屋書店