マキヒロチさんの大ヒットコミック『いつかティファニーで朝食を』(新潮社)は、朝活ブームを後押しし、「朝食女子」なるワードも生んだ。全14巻、約7年の連載を終えたマキヒロチさんが、次は何を描いてくれるのだろうと心待ちにしていたファンの心を射貫いたのが、『おひとりさまホテル』(新潮社)だ。
「紹介されたホテルに行ってみたい!」「おひとりさま宿泊は未体験だけど憧れる」と、反響は上々だ。8月に、第2巻が出たばかり。作品の魅力に迫ってみたい。
――『おひとりさまホテル』に登場するのは、30代前半の塩川史香を始め、ホテルを設計する会社に勤める男女です。群像劇ですが、冒頭を飾る史香は、いいホテルに泊まり、豊かなひとり時間を楽しむことを大切にしている女性で、このコミックの象徴的存在ですよね。まず、ひとりで特別なホテルライフを楽しむというテーマが生まれたきっかけを教えてください。
マキヒロチさん(以下、マキ) 『いつかティファニーで朝食を(以下、ティファニー)』やスピンオフの『創太郎の出張ぼっちめし』などを含めて、都内、近郊、地方などいろんな場所に行きました。私自身が旅好きでもあり、取材も兼ねてあちこち出かけては、ひとりで泊まることも多かったんですよね。
で、あるとき原案者のまろちゃんのInstagramを知って、その「おひとりさま」というコンセプトがとてもいいなと思ったんですよ。それで、おひとりさまとホテルを合わせた趣味の世界を広めたいね、と一緒にやることにしたんです。
まろちゃんがモデルになっているのが史香の後輩の中嶋若葉です。まろちゃんにも、若葉が出てきてしゃべると、「これ、まんま私じゃないですか(笑)」と楽しんでもらっています。だから、若葉が訪ねるホテルは、まろちゃんが好きそうな世界観のホテルにしようと彼女のインスタを参考にしたりしますが、基本的には、ストーリーやキャラクター、舞台にするホテルの選定など、マンガに関する部分は、私がひとりで決めてやっています。
2023.09.16(土)
文=三浦天紗子
撮影=清水 隆
撮影協力=代官山 蔦屋書店