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◆生瀬勝久

 生瀬勝久さん(以降敬称略)。彼は膨大な数のドラマや映画に出演してきた、言わずと知れたベテラン俳優。舞台で培った演技力と声量、滑舌のよさ、変幻自在の顔芸(失礼)でドラマ好きな人間以外にも顔が知られていると思います。

 お茶の間の認知度がグンと上がったのは、『トリック』(テレビ朝日系列)の頭髪に難を抱える警部補・矢部謙三や、再び仲間由紀恵と共演した『ごくせん』(日本テレビ系)の、リーゼントの教頭・猿渡五郎役。どちらもクセが強すぎるふざけたキャラクターで、顔がジム・キャリーばりに自在に動き、目玉が落っこちそうな表情で何度も爆笑させてくれました。

 ですが、このふたつのキャラクターのインパクトがあまりにも大きかったためか、その後の一時期は、テレビドラマではコメディリリーフのような役回りをさせられていることが多かった印象が。

 もちろん面白キャラの生瀬勝久はハズレナシの安心感に満ちているのですが、元々はシリアスな役もしっかり演じきれる俳優です。過去には『相棒』シリーズ(テレビ朝日系列)で哀しい連続殺人鬼、比較的最近では2021年のドラマ、『漂着者』(テレビ朝日系列)の昔気質の頑固な刑事などを演じていて、シリアスなキャラクターを演じている時もとても魅力的なのです。

 そして今回の消防団員・山原賢作役は、かなり武骨なキャラクター。幼馴染みの宮原郁夫(橋本じゅん)と共に消防団を引っ張る役柄ですが、林業の会社社長で団員の中では比較的強面で寡黙。生瀬がほとんど笑わず寡黙とは……!? と新鮮です。

 喧嘩っ早く押しの強い郁夫をなだめる役回りですが、その過程で郁夫と小競り合いになることもしばしば。どっちも面倒くさいおじさんの感じがリアルです。そんな風に普段は犬猿の仲のハズなのに、賢作が火事に遭い死にかけたとき、郁夫の必死の心臓マッサージで蘇生したシーンには、ふたりの友情にうるっとさせられました。

 皆が盛り上がっているときにもひとり冷静な意見を言い、やや偏屈にも見える賢作役は、彼が演じてきた役の中でもあまり見なかったキャラクター。得意の顔芸は封印され、でも生瀬勝久の新しい魅力に満ちています。一言で言ってみれば、渋い!

 必要があれば甥を脅迫したり、ドラマ好きが判明したりと、回を追うごとに、どんどん賢作の知られざる一面が明かされてきていて、目が離せません。こんな生瀬勝久もいるんだ、と驚くこと請け合いです。

2023.08.31(木)
文=斎藤真知子