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◆岡部たかし

 消防団員の中でも全体にチャラくて軽いノリなのが、岡部たかしさん(以降敬称略)演じる徳田省吾。

 東京からきた太郎(中村倫也)に、「目黒区の代官山(間違っている)でジャケット買ったことあるんやで」と話しかけて困惑させたり、登録者数20人未満のExTuber(YouTuber的なやつ)をやっていたりと、地方にいるけれど今どき感はあるよ、とアピールしている感じが絶妙で、かなり笑わされます。

 岡部たかしはバイプレーヤーとしてかなりのキャリアがありますが、飛躍的にブレイクしたのは最近。2022年のドラマ『エルピス―希望、あるいは災い―』(カンテレ、フジテレビ系列)で演じたチーフプロデューサー役で、絶大なインパクトを与えました。

 前半は反吐が出るようなセクハラ、パワハラ発言を繰り出し、視聴者から徹底的に嫌われて敵役かと思っていたのに、中盤から徐々にテレビマンとしての矜持を取り戻そうとあがく姿は秀逸でした。

 他にも『あなたのブツが、ここに』(NHK総合)のすぐ土下座する運送会社の社長や、『リバーサルオーケストラ』(日本テレビ系)の冷静な事務局長など、近年印象の強い役が増えている気がします。特に喋り方、イントネーションなど口調の演じ分けが上手く、本当にそういう人かのようにナチュラルに話す演技力があるからこそ、彼が演じるとそのキャラクターの印象がより強くなるのだと思います。

 まだまだ色々なキャラクターができそうなので、この先も期待が大きい俳優です。

 ドラマ内では今のところ極端に目立つ行動はしていないものの、放火犯が消防団員のひとりなのかも? という疑惑も浮上してきているため、岡部演じる徳田省吾が関わっていないとは言い切れない状態。そもそも消防団員全員が、犯人役にすぐスイッチを切り替えられそうな演技力の高い俳優ばかりなので、誰も犯人であってほしくないけど……しかし!? とヤキモキしながら見守りたいです。

2023.08.31(木)
文=斎藤真知子