壇蜜主演でドラマ化もされたコミック『アラサーちゃん』で、女性の恋愛やセックスにまつわる本音を赤裸々に描き、大きな反響を巻き起こした、峰なゆかさん。プライベートでは2020年に出産・結婚を公表。現在その様子を描いたエッセイコミック『わが子ちゃん』をWebサイト『女子SPA!』で連載中(単行本は3巻まで発売中)。「妊娠したら夫に読ませたい」「母子手帳と一緒に配って欲しい!」と熱い支持を集めている。
妊娠中の過ごし方や出産のスタイル、男女の役割分担まで、出産・育児にまつわるモヤモヤに忖度なく斬り込んだ実録エピソードの数々は、いまだ日本社会に根強く蔓延る「母性神話」を爽快にぶち壊し、「これなら自分でも産める/育てられるかも!」という安堵と希望を与えてくれる。
今の日本で子どもを産んで育てることをポジティブに考えられない人にこそ読んで欲しい。異次元の少子化対策と夫婦円満のヒントがここにある!?
「私も精子ピュッピュ係がよかった!!」
――『わが子ちゃん』の連載が開始したときは、あの峰なゆかが育児エッセイを描くとは! と驚きました。
私はもともと結婚はしたくないけど子どもは欲しい派の人間で、チャラヒゲ(峰さんのパートナーの愛称)は子どもは欲しくないけど結婚はしたい派の人間だったので、お互いの条件を呑んで、結婚して子どもを作ろうということになったんです。でも、実際に妊活をしてみて、その大変さにビックリしました。
たとえば、セックスする日が決まっているとは聞いてはいたけど、それがこの日にセックスして2時間以内に病院に来てください! みたいな感じで。病院が開くのが朝の10時で、チャラヒゲが家を出るのが8時なので、7時50分から玄関でセックスを始めて、終わったらチャラヒゲはダッシュで出社して、私も急いで病院に行く――みたいなことを週に何度もしなきゃいけない。
しかも夫は射精したら終わりだけど、私はその後もいろんな検査があったり、妊娠したら妊娠したで、つわりで死ぬような思いをしなきゃいけない。こんなしんどい思いをしてノーギャラなんてあり得ない! 絶対にマンガに描いて元をとらなきゃ! って、つわりが落ち着いた頃から真剣にメモを取り始めました(笑)。
――1巻は全て妊娠中のエピソードで、2巻の中盤でようやく出産を迎える。出産・育児マンガとしては出産までの話がとても長いですよね。
妊娠・出産がこんなに大変だとは思いもしなかったので、そこはちゃんと描いておきたいと思いましたね。こんな大変なことを女性の義務とか幸福とか、安易にいうヤツは鬼だなって。女性が自己決定したならまだしも、男が安易に子どもが欲しいとか言うなと思うようになりました。
2023.07.28(金)
文=井口啓子
撮影=平松市聖