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過食でメンタルと体がボロボロに

 そうしたら、すごく苦しくなってしまって。元々食べた分だけ体につきやすい体質に加えて、出産して減った体重はたった3kg。お腹もぺしゃんこに戻ると思っていたのに、まだお腹に入っているのかと思うくらい出っぱったままでした。それに、「産後ダイエットは6カ月が勝負」といった根拠のない情報を鵜呑みにしてしまって。出産したら妊娠前の元の体に戻れると思っていたのに、想像とは全くちがっていて、それで一気に不安にかられたんです。

 だから食欲はすごくあるけど、「食べたら戻れなくなる」と心にブレーキをかけて、理性で食欲をコントロールし始めました。体形を戻すために急いで頑張らないと、と焦って産後3カ月くらいから運動も始めたんです。

――母乳育児ってめちゃくちゃお腹が減るし、産後は、まだ体があちこち痛みますよね。

いしかわ そうなんです。でも、妊娠前と体形が違うっていうのが、自分の中ですごく不安で。何より、それまで食欲が爆発した経験がなかったから、変化が怖かったんですよね。これは自力でなんとかしなきゃと思って。筋トレをしたり、食欲をコントロールして脂質の摂取を控えたり。人生で初めてダイエットしたんです。そうしたらなんとか産後1年で妊娠前より1キロ減りました。

 でも、そこから過食が始まって。結局、妊娠ピークの頃の体重までリバウンドしたんです。「食事を我慢しても食欲が爆発して、ものすごく食べてしまう」「食べたら運動しないと不安になる」を繰り返して。メンタルも体もボロボロになっていきました。

――産後にその体験は、かなりハードですね……。

いしかわ 必死だったんです。ボロボロになった時にふと、「細くてきれい」というボディメイクに意識が先行していたけど、子育てでは「健康で丈夫で、へこたれない体」の方が大事なんじゃないか、と思いました。体に対しての認識が「外側をきれいに見せるためのもの」から、「子どもを育てながら、日々を生きていくための乗り物」に変わったというか。見た目がどうとかじゃなく、しっかり走れる体にしないとという意識に変わったんです。

 そこから、「自分の体とちゃんと向き合っていこう」と思えましたね。食べたいと思うだけ食べて、心地よいと思える運動をする。「体重が増えようが増えまいが、自分のアイデンティティは変わらない」。そう思えるようになって、体重計を捨てました。そうやって自分の心と体のバランスがとれるようになったのは、子どもが2歳になる頃でしたね。

2023.07.31(月)
文=ゆきどっぐ