後輩が迷っているときに何かアドバイスをするなら……?

――来栖のように……とは言わないまでも「後になって思い返すとすごく自分のためになったな」と思うことは成田さんもありますか?

 ありますね。この仕事を始めて最初の頃、ドラマで段取りをやっていたんです。初めてだったこともあって、監督に1個1個質問していたんですね。そうしたら、先輩俳優さんに「そういうのは自分で考えるんだよ」と言われました。

 その時はわからないことがたくさんありましたが、今の自分があるのはその言葉のおかげだと思っているので、その言葉は一生忘れません。それからすごく考えるようになりましたし、本当に言ってもらってよかったなと思います。

――まさに気づきの一言だったんですね。逆に成田さんが、後輩が迷っているときに何かアドバイスをすることもあるんですか?

 何も言わないかもしれないです。例えば、もしも「オーディションが受からないんですけど……」と相談されても、人それぞれだし、オーディションなんて分からないじゃないですか。その役に合っているか・合っていないか判断するのはスタッフさんなので。

 ただ……相談されたら、「オーディションといっても、今後一緒に仕事をする人だから」とは言うと思う。……あ~、でもやっぱり「明日オーディションか、頑張れー!」ぐらいしか言わないかな(笑)。

――ご自身の経験もふまえるようなアドバイスは、すごくためになる気がします。

 でも何と言うか……言葉で言っても入っているか、入っていないか分からないですよね。帰ってお風呂に入ってるときに思い出すことなんて、一言ぐらいじゃないですか。教えられたりしても何も響かないかもしれないし、自分で見つけないとダメとも思うから、あまり余計なことは言わないです。背中で見せていくしかないと思うので。でも僕は好きな先輩の言葉は逃したくないなとは思います。

――成田さんご自身は、仕事を始めた頃と今で仕事に対する印象はどう変わりましたか?

 始めたての頃は一生懸命がむしゃらに、自分のことをやっていました。そのときにはいろいろなことが気になってしまって、我儘になってしまったこともありました。でも、現場で色んなことを覚えていって、知っていき見えていくと、最近は、もういい意味で細かいことが気にならなくなってきたという変化はあります。どの職業でもそうだと思うんですけど、年々、責任を感じてくるなと今30手前にして思っています。

2023.07.17(月)
文=赤山恭子
撮影=平松市聖
ヘアメイク=反町雄一
スタイリスト=伊藤省吾(sitor)