千早 「お父さま」って?

 北方 いや、「2回目だからおじいちゃんですね」って言いやがったんだよ(笑)。

 千早 さすが角田さん。

 北方 でも、受賞してくれるんなら、おじいちゃんでもいいです。

 千早 でも、小説すばるの出身者は、みんなダディと呼びますから。お父さんですよね。村山由佳さんもそうだし。

 北方 尾崎世界観が君に「明日、北方さんと会う」と連絡した時に、君が「ダディによろしくね」と返したんで、尾崎は目が点になってた。男どもはみんな「おやじ」とか「おじき」。天野(純希)は「うちのおやじが」って。

 千早 確かに、歴史小説系の方はそうかも。関口(尚)兄さまもダディって言いますよ。私は関口さんのことは「兄さま」で、矢野さんのことは「兄貴」と呼んでます。

 北方 小説すばるの二次会が有名になってるけど、あれはふるさとなんだ。みんな、日頃の作家生活で殺し合いをやってる。誰かが生き延び、誰かが斃れる。ただ、1年に1回だけ、お前ら、ふるさとに戻ってこいと。そこで、生存を確かめるというか、お互いに顔見ようよ、俺は何でもやるからと、司会をやってる。

 千早 そしてダディの指揮のもとに三本締めをしてそれぞれの戦場に戻る。ダディは、いっぱいいる受賞者みんなにちゃんと声をかけてくれる。すごい優しいんですよね。

 北方 いい賞です。選考委員のわれわれも何となく誇りですよ。

 千早 だから、今回、北方先生の最後の直木賞の選考で、もう1回読んでいただけて、受賞できて本当に良かったです。ありがとうございました。

写真◎石川啓次


 (「オール讀物」3・4月合併号より転載)

オール讀物2023年3・4月号(第168回直木賞決定&発表)

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2023.07.04(火)