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思わず背筋が凍った、前田監督の一言

――さよは原作にはない、映画オリジナルのキャラクターです。監督からはどのように演じてほしいというリクエストがあったのでしょうか。

杉咲 クランクインの前日に「みなさんたくさんアドリブを入れているので、杉咲さんもどんどん入れてください。さよはビシバシ突っ込めるキャラクターなので」と言われまして。背筋が凍りました(笑)。私はインするタイミングがみなさんより少し遅かったので、一体全体どんな現場になっているのだろう、と……(笑)。実際に撮影が始まってみると、お聞きしていた通りアドリブが飛び交っていて。というより、アドリブが出るまでOKがかからなさそうな雰囲気があったりして(笑)これはもう飛び込むしかないぞと自分を奮い立たせ、必死にみなさんの背中を追いかけていました。

――アドリブで印象的なシーンはありますか?

杉咲 全シーンにアドリブ入っているんじゃないかというくらい、みなさん勢いが凄まじかったので、全部です(笑)。ですが敢えてあげるとしたら、物語の序盤で、小四郎ちゃんとさよが悪者たちに追いかけられて、橋の上で追い詰められるシーンです。

 本番中、私たちがつかまりそうになる直前で、監督が悪者役の方に『ナイフ舐めて!』と指示を出されて……。いま、一体何が起こっているのだろうと思っていたら、神木さんが『うわ、舐めてる……!』とすかさずアドリブで突っ込まれていて、さすがだなと。こんなに自由でいいんだなぁ、と思いました。

「何があってもこの人は味方でいてくれる」安心感

――ご自身では「さよ」のキャラクターをどのようにつくりあげていったのですか?

杉咲 プランを練り上げていくというよりは、現場に行って、みなさんから生み出されていく空気のなかでさよという女性の人物像が立ち上がってきた感覚でした。

 台本を読んだ時から演じ終えた今も、ポジティブで快活な人というイメージは一貫してあるのですが、私がいちばん惹かれているのは、自分の利益だけではなく、大切な人のために見返りを求めず手を差し伸べ続けるところです。「何があってもこの人は味方でいてくれる」という安心感、信頼感が伝わったらいいなと思っていました。

2023.06.23(金)
文=相澤洋美
撮影=釜谷洋史
ヘアメイク=kika
スタイリスト=田中美和子