ピンスポットが当たらない! 前例がなかったソロダンスの苦労

 TRFが本格的にブレイクを果たしたのは5thシングル「寒い夜だから…」。私の中でも、TRFが謎のダンスグループから「好き」に変わったきっかけである。「聴かせる」王道のグループとしてもこんなにすごかったのかとCDショップに走った。

 イントロなし、いきなりの「寒ーいー夜だからー!」でグッと心をつかまれた。「街よ! 伝えてほしい」の部分も泣ける。「風よ」や「空よ」ではなく、「街よ!」というのがいいなあ。すべての恋人が幸せになれると錯覚するようなムードに包まれるクリスマスシーズンの街の風景が見え、「この想い、とにかく届け」という切実な気持ちが伝わってくるようだ。

 YU-KIのまっすぐな声も、ひんやりとした冬の風を思わせる。ああ、名曲!

 また、その頃には、TRFの持つ「地に足がついている感じ」にも好感を持つようになっていた。それは、ETSU、CHIHARUの存在がとても大きい。お二人とも芸能人でありながら、理想的なインストラクターオーラを放っている。どれだけ人気者になっても、空いた時間を見つけ、教室でダンスを教えてくれそうな雰囲気がブレない。これはものすごい安心感である!

 デビュー当時はダンスメインというグループ体制の前例がなく、彼女たちがソロパートを踊っているのにピンスポットが当たらないこともしょっちゅうあったのだとか。ピピピピンスポットがあたらないソロダンス! こんな報われないことがあろうか。「間奏のダンサーのソロは、ギターのソロと同じだから、当ててくれないと困る」と小室哲哉が直談判をして解決したというが、やはりパイオニアには、道を切り開く苦労があるのだ。

『EZ DO DANCERCIZE(イージー・ドゥ・ダンササイズ)』にも挑戦

 このようにTRFとゆっくり距離を縮めていった私だが、「EZ DO DANCE」と「BOY MEETS GIRL」は意外な方面から再ブームが来た。リリースから約20年後の2015年頃、私はこの曲をダイエット目的でヘビロテすることになったのだ。そう。『EZ DO DANCERCIZE(イージー・ドゥ・ダンササイズ)』のDVDを購入。ダンササイズに挑戦したのである!

 当時、ジム通いもスイミングもホットヨガもロングブレスダイエットもすべて挫折。もうこれに賭けようと思った。記憶を辿れば、幼き頃、盆踊りが得意だった。私に運動神経はないが、運動神経とリズム感は別モノらしいし、ダンスなら私だって楽しんで痩せられる、いや、それどころか板チョコのように腹筋も割れる気がする――。

 残念ながら、そんな希望は木っ端みじんに打ち砕かれた。幼き頃のリズム感は消えていたのである。む、ムズい!  ただ、表情だけはキメキメで楽しんだ。結果的に体重は減らず腹筋も割れず挫折するのだが、TRF気分にはなれたので、あれはあれでいい時間であった。ありがとう、TRF!

2023.06.20(火)
文=田中 稲