監督と同じ方向を向き作品をつくれた充実感

 今回、山下さんが新たにタッグを組んだのが『私の頭の中の消しゴム』や『サヨナライツカ』などで知られる恋愛映画の名手、イ・ジェハン監督。ジェハン監督が脚本も手掛け、山下さんが主演を務めた『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』は、次第に視力を失っていく漫画家・真治と、彼の作品を支えに生きる聴覚障害を持つ響のラブストーリー。

 10代のときに観た作品でジェハン監督のファンになり、最近見返しても「また違う角度で観られて、やっぱり面白かった」と興奮する山下さん。現場で必要だったのは、やはりコミュニケーションだった。

「監督は韓国出身ですがアメリカで育っているので、英語でたくさんコミュニケーションを取りました。監督は“この先、人生であと何回映画を撮れるか分からないという思いでやっている”と言っていて、僕も一緒でした。お互いに将来の保証はないし、これが最後の仕事になる可能性だって高い。だからこそ“すべてを懸けるに値する。そういう時間だ”ということを、話しました」

 同じ温度感、高い熱量でものづくりができる喜びを全身で感じた。

「情熱の共有をできたことが、制作をする上では大きかったです。どういう気持ちでやっているかをお互い分かり合っていないと、ただの過酷な状況になってしまうこともあるので。撮影は大変ではありましたけど、あっという間で、本当に濃密で、楽しかったです」

 数々の恋愛作品を世に送り出してきた山下さんだが、数年ぶりの同ジャンルへの出演となる。

「20代のときに出演していたものだと、ドキドキとかワクワクがメインになっていました。けど、この作品は人としての愛情を描いているので、もう一段深いところに迫っていると思います。ヒロインと僕との間に境界線があるようでなくて。“自分を犠牲にしても”という深い感覚が存在していました。自分よりも大事な誰かを大切にする、という思いで演じられました。人間の心を純粋に一生懸命描き出している作品ですね」

 うっとりするような映像美を紡ぎ出すジェハン監督が捉えた山下さん。内に秘めた情熱を解放した作品に期待がかかる。

衣装クレジット

ジャケット 46,200円、シャツ 33,000円/ともにMATSUFUJI パンツ 77,000円/ensou. シューズ 65,800円/nonnative(TNP)

山下智久(やました・ともひさ)

1985年4月9日、千葉県生まれ。1996年より芸能活動を開始し、『野ブタ。をプロデュース』、『クロサギ』、『コード・ブルー』シリーズ、『あしたのジョー』など代表作多数。Huluオリジナル『神の雫/Drops of God』が2023年9月に配信予定、『正直不動産スペシャル』が放送予定。

映画『SEE HEAR LOVE 見えなくても聞こえなくても愛してる』

漫画家の泉本真治(山下)は自身の作品が映画化されるという朗報を聞く。喜びも束の間、突如病に倒れ、視力を失い連載も休載。孤独と恐怖に襲われた彼を助けたのが、耳が聞こえない相田響(新木優子)だった。6月9日(金)Prime Videoにて独占配信開始。
https://see-hear-love.com/

2023.07.07(金)
Text=Kyoko Akayama
Photographs=Norihiko Okimura
Styling=Go Momose
Hair & Make-up=Ichiki Kita(Permanent)

CREA 2023年夏号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

母って何?

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