王室が守護した伝統技術、恵まれた自然環境、民族特有の美意識……。様々な幸運が重なって、タイはハンドクラフトの王国となった。
刺繍、バスケット、そして青磁器。匠たちの物語をここに。3人の匠を3回に渡りご紹介。
エメラルドグリーンの艶やかな誘惑
◆Celadon(セラポット・カフェ・アンド・ギャラリー)
![手前から、マグカップ魚柄 400タイバーツ、同無地 450タイバーツ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/3/1280wm/img_a310ff681f58102ae9dda8936db9f36784891.jpg)
セラドン焼は、タイ北部を代表する青磁器。向こうが透けて見えるのではないかと思わせるほどの透明感の虜になったコレクターは数知れず。
![セラドン焼は、形を整えて一度素焼きした後、釉薬を塗ってもう一度焼成する。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/a/3/1280wm/img_a3e78ddc941911c5690f7bb95034e4b690353.jpg)
セラドン焼の歴史は、今から約700年前のスコータイ朝にまで遡る。その技術はもともと、中国の陶工によって伝えられたものだという。
![セラドン焼の容器入りアロマキャンドル 599タイバーツ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/1/1280wm/img_b18cc70c6e09e8953fe8cc6a1da80cee133924.jpg)
木灰を主原料とした天然の釉薬を用いて高温で焼成するため、微量の鉄分が酸化して独特の緑がかった色を帯び、冷ます過程では、葉脈のような細かいひび割れ状の模様が現れる。それを、ガラス状の釉薬が包むことで、曰く言い難い艶やかな表情が生じるのだ。
![美術館のように整然とした空間。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/4/4/1280wm/img_44fb77731b2481977afa028191a15e49274239.jpg)
セラドンという言葉は、てっきりタイ語かと思いきや、フランスの作家オノレ・デュルフェが17世紀初頭に著した小説『アストレ』の登場人物の名が由来の色名だというから少し意外だ。
![「セラポット」のアフタヌーンティーは、4品 1,290タイバーツ、3品 990タイバーツ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/0/1280wm/img_006df91bc6aac976d50a1990c643ba66133113.jpg)
2022年、セラドン焼ブランドの一つである「セラポット」は、チェンマイ旧市街から車で40分ほどの郊外に、ギャラリーとカフェを兼ね備えた施設をオープンした。
![工房には素焼きのストックがたくさん。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/0/1280wm/img_00da1fa626590e359edd6afb1d51604c243572.jpg)
隣接する工房では、10名に満たない少数精鋭の職人が、すべてハンドメイドで様々な種類の器を完成させる。
![こちらの絵付けは、インドの神話に登場するハヌマーンがモチーフ。なお、工房は一般には非公開。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/1/8/1280wm/img_18f1a1830e1cb88e1fdd1cebccf528b3135633.jpg)
特筆すべきは絵付け。繊細な筆先が描き出す細密な絵柄や文様は、緑あるいは青一色という旧来のセラドンのイメージを一変させる。
手仕事の精華に囲まれながら過ごす素敵なティータイム。その帰途、あなたの荷物はきっと増えているはず。
![カフェのインテリアも緑が基調となっている。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/e/f/1280wm/img_ef5d6909a15463669ad9f7a60929e8da363329.jpg)
》「セラポット・カフェ・アンド・ギャラリー」の全ての画像を見る
Celadon(セラポット・カフェ・アンド・ギャラリー)
所在地 162 Moo.3, Pa Pong, Doi Saket, Chiang Mai
電話番号 096 154 1928
営業時間 10:00~19:00
定休日 無休
https://www.celapot.co.th/
![](https://crea.ismcdn.jp/common/images/blank.gif)
Column
CREA Traveller
文藝春秋が発行するラグジュアリートラベルマガジン「CREA Traveller」の公式サイト。国内外の憧れのデスティネーションの魅力と、ハイクオリティな旅の情報をお届けします。
2023.06.16(金)
文=下井草 秀
撮影=佐藤 亘
CREA Traveller 2023 vol.2
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。