王室が守護した伝統技術、恵まれた自然環境、民族特有の美意識……。様々な幸運が重なって、タイはハンドクラフトの王国となった。
刺繍、バスケット、そして青磁器。匠たちの物語をここに。3人の匠を3回に渡りご紹介。
王族たちに愛された気品あふれるバスケット
◆Yanlipao Bag(ブンヤラット・タイ・クラフト)
パリット・ホンスチョンさん
![黒と白の対比が文様の緻密さを際立たせる。金具による装飾もヤーンリパオバッグの伝統。2,900タイバーツ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/f/1280wm/img_7fd1004012c8941781fa64e5206e1d6d221020.jpg)
ヤーンリパオとはタイ南部の熱帯雨林で育つツル性シダ科の植物。そのツルの表皮を剥がし、芯の部分を1ミリ以下に削ったひごを編んで作り出すバスケットがヤーンリパオバッグだ。
精緻な文様を編み上げ、華やかなデザインの金具で装飾を施すヤーンリパオバッグは、美しく軽く、そして堅牢。ラーマ5世の時代より王室御用達としてその名を知られている。
![どんなファッションにも合わせられそうなミニマルな3ウェイバッグ 3,300タイバーツ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/4/1280wm/img_54a3dff889b5d998ab56c3650c2353d6243444.jpg)
だが、その緻密さゆえ、ベテランの職人でも完成できるのは1カ月に1、2個ほど。高い技術と根気を要する手作業であり、時代の変遷とともに職人の数は減少していったが、現在では生産者による新たな組織づくりや公的サポートなどにより技術継承が進められている。
![パリット・ホンスチョンさん。「ブンヤラット・タイ・クラフト」代表。タイ最大級の複合施設「アイコンサイアム」の「アイコンクラフト」などにコーナーを持つほか、日本をはじめ国外の展示会にも積極的に参加し、ヤーンリパオバッグの魅力を世界に発信している。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/0/1280wm/img_50fbfa12f40bfaeca075239b5fcf244e153557.jpg)
「ブンヤラット・タイ・クラフト」も、そんな取り組みを続けているブランドの一つだ。代表のパリット・ホンスチョンさんは特産地であるナコーンシータマラート県出身で、ヤーンリパオバッグの職人である父のもとで修業を積み、このブランドを立ち上げた。故郷が誇る伝統を守りつつ、日本の浮世絵やハイブランドのデザインにインスパイアされたバッグなども手がけ、SNSで国内外に発信。
![斬新なデザインのクラッチバッグ(3,300タイバーツ)や帽子(2,100タイバーツ)はパリットさんが葛飾北斎の「冨嶽三十六景」から着想を得て制作。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/6/1280wm/img_66d986eaaeb0847dc40766150f869ee1364764.jpg)
若き後継者が、ヤーンリパオバッグの新たな可能性を世界へと広げている。
![熱帯に自生するシダの一種、ヤーンリパオのツルを用い、精緻な文様を編み上げたバッグ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/a/1280wm/img_6a1c5804c46b00de7dac255a9316528f192079.jpg)
Yanlipao Bag(ブンヤラット・タイ・クラフト)
所在地 4/5F, Iconsiam, 299 Charoen Nakhon Rd., Khlong Ton Sai, Khlong San, Bangkok
電話番号 02 495 7000(アイコンサイアム)
営業時間 10:00~22:00
定休日 無休
https://www.facebook.com/people/Lipao-craft-by-Boonyarat/100064127555135/
![](https://crea.ismcdn.jp/common/images/blank.gif)
Column
CREA Traveller
文藝春秋が発行するラグジュアリートラベルマガジン「CREA Traveller」の公式サイト。国内外の憧れのデスティネーションの魅力と、ハイクオリティな旅の情報をお届けします。
2023.06.15(木)
文=張替裕子(Giraffe)
撮影=橋本 篤
CREA Traveller 2023 vol.2
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。