◆Yの字のヒミツ

よーく見ると、
アルファベットの“Y”が顔の真ん中に!

においを嗅ぐときはヒクヒクヒク、
Yの上部が閉じたり開いたり、
神様はなぜうさぎにYを与えたのか?

Y=鼻+口

 Yの字と呼ばれる部分を2つに分解して見てみましょう。まずはYの上部分。逆三角形のところは鼻で、この2つの線が鼻の穴です。鼻をヒクヒクと頻繁に動かすと鼻の穴も広がって、中のピンク色の粘膜部分が見えます。

 そして鼻の下にあるのは口。まっすぐな棒線は上口唇と呼ばれる唇の割れ目部分です。上口唇は左右に開く仕組みで、開くとおなじみの2本の前歯(切歯)があります。上口唇が前後左右に動く動物は、うさぎだけと言っても過言ではないかもしれません。

 小さな口で硬いものをたくさん食べるので口を動かしやすいようにこの形になったという説や、意思表示をしたり、頻繁に鼻を動かしやすくしてにおいを嗅ぐために上口唇が割れているという説もあります。

 視覚より嗅覚が優れた動物だからこその、こだわりが詰まったYの字なのです。

◆しっぽのヒミツ

ふわふわの体のうしろに
さらなるふわふわが、
ぽつん。

実は見た目以上の
役割があるのです。
ふわふわしっぽのヒミツをどうぞ。

実はおしゃべりなしっぽ

 ふわふわの球体のように見えるしっぽですが、これは興奮したり周囲を気にしたり、活発に動いているときの形です。普段は楕円形に近く、リラックスしていると見られます。このように、しっぽはうさぎの感情に合わせて形が変化するのです。しっぽの中には尾椎という12~18個の小さな骨が詰まっています。尾椎は背骨から伸びた骨で神経もきちんと通っているため、感情に合わせて動かすことができるのです。

 そして、どんな体色のうさぎでも、しっぽの裏側はほとんどが白。もとは敵が近づくとしっぽをぐんと上げて、仲間に知らせる役割があったと考えられています。しっぽを立たせると裏側の白い面積が目立ち、緑の草原では警戒サインとして役立ちます。飼われているうさぎたちも、怒ったときはしっぽがピンと立っています。こっそり確認してみてください。

◆心のヒミツ

鳴かない動物だから
心を読み解くのはむずかしい。

でも、だからこそ
あらゆる方法で気持ちを伝えてくれています。

人がうさぎを知ろうと
歩みより続けていけば、
おたがいのヒミツなんて
いつのまにかなくなってしまうのかもしれません。

うさぎは人とコミュニケーションできる

 うさぎは発する声こそ少ないものの、人にも愛情をもって接してくれる動物です。そして、とても感情豊か。もともと野生のアナウサギは家族を中心にした群れをつくり、同じ巣穴で暮らす習性があります。集団で暮らし、家族や仲間とふれあう生活が当たり前。群れは一夫多妻制で、強いオスとそのつがいとなる複数のメス、子どもたちで構成されます。

 誰かと身を寄せ合い、毛づくろいをしたり、食事をして過ごすのが、うさぎにとっての「普通の生活」。そして、群れの仲間と過ごす時間だけでなく、ひとりの時間も大事にする生き物です。飼われているうさぎたちも当然、そんな暮らしを望んでいます。

観察して、サインに気づく

 うさぎたちの心に近づくためには、私たち人が歩み寄りましょう。まずは表現やしぐさを、うさぎに負けないくらい五感をフルに使って観察します。すると、うさぎならではの魅力的な表現が私たちに向けられていることに気づくことができるでしょう。

《うさぎの愛情サイン》

・鼻先でツンツンと飼い主さんの体をつつく(通称:鼻ツン)
・座っている飼い主さんのそばにぴったりくっつく
・飼い主さんの手のひらの下に自ら頭を置いて「なでて」のポーズをとる
・飼い主さんの脚にスリスリする
・自分に興味がないとわかると怒る

 これらの愛情サインが見えたら、思いっきりうさぎとのコミュニケーションに時間を割きましょう。このとき、人がうさぎに合わせることを心がけて。大事なのは人のタイミングではなく、うさぎのペースに合わせること。

 うさぎの心に寄り添い続け、試行錯誤を繰り返していくことが、うさぎの心のヒミツを解く手掛かりになることでしょう。

監修
樋口悦子(ひぐち・えつこ)

「ウサギ専門クリニックvinaka」院長。幼少期からうさぎと共に育ち、様々な経験をする中でうさぎに特化した獣医師になることを目指す。大阪府立大学卒業後、犬猫の動物病院で一般診療を学んだ後、うさぎ医療の第一人者である斉藤久美子先生に師事。2019年にうさぎ以外の動物によるストレスを排除したうさぎのための病院を開院。日本獣医エキゾチック動物学会所属。

うさぎのヒミツ

定価 1,760円(税込)
グラフィック社
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2023.05.17(水)
監修=樋口悦子
文=グラフィック社編集部
写真=横山君絵、宮本亜沙奈