「うさぎたちは物言わないとされますが、私はすごくおしゃべりだと思っています。表情豊かでとっても素直に気持ちを伝えてきます」

 そう語るのは、うさぎ専門のクリニック「vinaka」院長の樋口悦子先生。これまで、うさぎの専門的な医療を受けられる場所は少なく、樋口先生自身も、子どもの頃に一緒に暮らしてきたうさぎたちのために悲しい想いをしたことも。うさぎ医療の道を切り拓いた斉藤久美子先生に師事し、“うさぎ道”を歩んできたと言います。

「この10年でうさぎに関する情報は次々と更新され、ひと昔前に推奨されていた情報が今ではまったく用いられなくなっていることもあります。『うさぎに水をあげると死んでしまう』なんて今では誰も信じないですよね。うさぎという動物について少しずつ研究や理解が進み、ヒトとうさぎのより良い暮らしのための情報がたくさん増えてきました」

 樋口先生が監修した書籍『うさぎのヒミツ』には、そんなうさぎともっと幸せに暮らせるヒントがたっぷり。また、見ているだけで幸せになれる、うさぎたちの写真も満載です。今回は、そのなかから“うさぎのかわいさのヒミツ”を抜粋してお届けします!


◆耳のヒミツ

うさぎといえば、長い耳。

ネザーランドワーフ、ホーランドロップ、ミニウサギ、
アンゴラ、レッキス、ジャージーウーリー……。

うさぎの種類によって長さや形はいろいろだけど、どの耳も魅力的。

今日も世界中でうさぎの耳が
人には聞こえない小さな音に気づいて
ピンと立っていることでしょう。

敵から逃げるために大きくなった耳

 うさぎが長い耳を持つのは、音がよく聞こえるように進化したためと考える説もあります。野生下で暮らすうさぎは常に肉食動物から狙われています。近づいてくる敵の足音を聞き逃さないよう、音を集めるために耳の面積がパラボラアンテナのように広くなったのではないかと言われているのです。実際に研究でもうさぎは犬と同じくらい耳がよいことが証明されています。ただし、うさぎの耳の長さや大きさが聴力にどれくらい影響しているかは正確にわかっていません。

耳は体の熱を逃がす放熱器官

 耳が大きいもう一つの理由は、うさぎが汗をかきにくいことに関係しています。うさぎの体には汗を出す「汗腺」があまりありません。犬は舌を出してハアハアすることで体にこもった熱を逃がし、足裏の肉球や湿りやすい鼻からも汗を出します。ところがうさぎの足裏には犬猫のような肉球がなく、鼻も上口唇にわずかな汗腺があるだけです。このため、体の中でいちばん毛が薄い耳が体の熱を逃がす役割を担っているのです。

◆目のヒミツ

ガラスでできているような
透き通った、美しい瞳。
その上をやさしく彩る、長いまつげ。

宝石みたいなうさぎの目に
見つめてもらえる時間があることは、
だれにも教えたくない
うさ飼いさんだけの
ひそかな自慢です。

うさぎなりに世界を見ています

 つぶらな瞳は直径約1.5~2センチ。人の目は約2センチなので、顔の大きさに比べて目が大きいことがわかります。一見黒目がちですが、しっかりと白目があり、特定のものをよく見たいときや興奮しているときにチラリと白目が出ます。

 瞳は光に敏感で、人の8倍も高い感度を持ちます。野生下では朝方と夕方に活動するため、薄暗いところでも物が見えやすいように発達しているのです。ただし視力はあまりよくなくぼんやりした視界。全体的に青みがかった世界のようです。

うさぎは眠らない!?

 野生下では常に狙われているため、うさぎは寝るときも目を開けたままで睡眠がとれるとされています。まばたきも少なく、1時間に10回ほどでも大丈夫。人よりも涙に含まれる脂質が多いので、目が乾かないのです。けれど、飼われているうさぎは安心しきっているのか、飼い主さんの前でだらんと寝る子がとても多いようです。

2023.05.17(水)
監修=樋口悦子
文=グラフィック社編集部
写真=横山君絵、宮本亜沙奈