今まで一度もなかった「仕事を飛ばす」ということ
――2022年6月上旬。Twitterではむはむの酸素室をレンタルしたと報告されていたのはその頃でしたね。
病院の先生には以前から「必要になるかもね」とは言われてたんですけど、あの時は使わざるを得なかった。それくらい体調がよくなかったんです。
一番危なかった時、仕事に出てたんですけど、(ペットカメラで)気づいてすぐ家に帰りました。
――野田さんも最後の3日間で体重が5キロ減ってしまったそうですが、つきっきりで一緒にいたんですか？
そうですね。ただ、接触することが一番のストレスなので。はむはむにとってどうするのが一番いいかをずっと考えていたんですけど、難しかったです。
最後まで何をしてあげればいいのかわからないのも辛かった。薬も飲んでるし、ご飯は食べてるし、気圧も湿度も温度も正常。清潔でもあったし。もうずっとパニックで壮絶でしたよ。
――以前この連載でお話を伺った際、ハムスターの寿命を考えた時に「(精神的に)大丈夫なのかなっていうか、できれば俺のほうが先に死にたい、ってところまで来てます」と話してくださいました。
実際、そんなクールには考えられなかったですね。それどころではなかった。俺、途中からずっと怖かったんですよ。朝起きて「もしかしたら」って思ってしまう。そんな心配をよそに、(はむはむは)ずっと元気だったんですけどね。
――最後の3日間はどう過ごされていたんですか。
厳密に言うと、仕事を休んで看ることにしたんです。今まで仕事を飛ばすことは一度もなくて。人生において、仕事を休んでまで優先するものはないんだろうなと思ってたので、こんなこともあるんだと思いましたね。
最後の1日は亡くなるんだとわかるくらい衰弱していました。けど何もできなかったです、あの3日間は。
こういう状況になった時、誰しもが休んだほうがいいとか休むべきだというつもりはない。けど、僕は、仕事を休んでよかった。その日の1本目の収録時間に亡くなったので。迷惑をかけた方々には申し訳なかったです。
――今の率直な気持ちを聞かせていただいてもいいですか。
とにかく周りに迷惑かけたなって。こんなに心配かけるのかと思いましたよね。気を使われるし、いろんな声もかけてもらって。だって、あんなにいろんなことをイジる芸人たちがこの件に関しては一切イジらないですから(笑)。
でも、テレビにも出ましたし、ガチャにもなったし、いろんな人にグッズも作ってもらって。こんなに形に残ったハムスターはいないんじゃないかっていうくらい残りましたよね。もらったグッズは今も飾ってあるんですけど、最終的に俺より人気ありましたね、はむはむは。アイドルだぞ！ はむはむ！ って言いたいです。
2023.05.06(土)
文＝高本亜紀
撮影＝深野未季
写真＝野田クリスタル
