この記事の連載
- 水野英子先生インタビュー【前篇】
- 水野英子先生インタビュー【後篇】
●おてんば少女は伝説の「トキワ荘」の紅一点になった
初の長期連載作となった『銀の花びら』(原作:緑川圭子)は争いに巻きこまれたヒロインが大活躍するダイナミックなストーリー。美しいドレス姿もあれば男装姿で馬を駆ることも。まさに『リボンの騎士』の衣鉢を継ぐこの作品で、10代にして人気作家としての地位を得た。
「外国ものの方が生き生きすると言われましたね。日本を舞台にしたマンガは描きたくなかったです。原作つきで何本か描いたことはありますよ。仕事は仕事なのでやりましたが……そもそも日本のあり方が嫌いなわけだし、四畳半的な物語は私が描いても魅力がないと思いました」
水野が上京し、あのトキワ荘に7カ月間入居したのは『銀の花びら』連載中のことだ。編集者の手引きで、赤塚不二夫、石ノ森章太郎とともに合作を行うためであった。今となっては全員が巨匠!「U・マイア」という名義で発表された3人の合作は「少女クラブ」に3作発表されている。
「これは本当に大きな経験でしたね。それまで田舎でひとり、独学で描いていたわけですから。マンガの描き方についてみなさんのやっていることがじつに斬新に思えました。お2人がホワイトを使うのを見て『こうやってたのか!』と驚きましたね。それまでは、目の中の星も白いところは、紙の白地を残すようにぬいて描いていたので絶対失敗できなかったんですよ(笑)」
2023.03.31(金)
文=粟生こずえ
写真=鈴木七絵