事故で亡くなった平凡な女性の麻美=あーちん(安藤サクラ)が、人生をゼロからやり直す姿を描く、バラリズム脚本の地元系タイムリープヒューマンコメディ「ブラッシュアップライフ」がいよいよ最終回! どハマりする人が回を追うごとに増え続ける本作、ドラマ好きの心をくすぐる仕掛けを紐解きます。

安易な徳ではなく使命感で身近な人を救う

 最初の人生では市役所勤務。“徳を積む”ために挑んだ2周目の人生では薬剤師に、3周目の人生ではドラマプロデューサーに、4周目には超エリートの研究医に。そして5周目であーちんはパイロットになっています。

 「徳を積む」は、最近ではオタク界隈を中心によく使われている言葉。立派な行動を積み重ねて人徳を高めればきっといいことがある。その心がけで募金をしたり、なかにはファン同士でお金を出し合い、推しの誕生日に毎年カンボジアに井戸を贈呈するなんていう強者も。

 今作においての徳は、ゴミ拾いはもちろん、友達の父親が不倫しそうになっているのを阻止したり、中学時代に嫌いだった教師を痴漢の冤罪から救ったりと基本的に自分の人生における身近な出来事を救うことが中心です。

 不倫阻止って、他人の恋愛に首突っこんでいるだけじゃない? これって徳なの? という話もあるけど、その是非は本作には関係ありません。だって何が徳にカウントされたているかは特に明らかになっていないから。

 しかも3周目で実際に自分の人生をドラマ化するくだりでは、そのありきたりな人生を否定されるという流れがあったので、今までの徳積み行動も笑いにおける「フリ」だったことがわかります。

 それでも4周目以降でキャルアップを続けながら、不倫阻止や冤罪救出など同じことをミッションとして続けるあーちん。もはや徳ではなく、自らがやるべき使命のように感じます。

 人生を突き動かすものって、きっと身近な人を救って幸せしたいという気持ちなのかもしれません。

カラオケに行きたくなる平成ノスタルジーな楽曲

 シール交換、セーラームーンごっこなど懐かしい遊びのモチーフの登場もさることながら、ドラマ内に散りばめられた色褪せない名曲たちの存在も大きいです。

 「ブラッシュアップライフ ~平成の答え合わせMIX~ By DJ和」というコンピレーションアルバムが発売されましたが、思い出たちが鮮烈にカムバックしてしまう、アラサー以上直撃の怒涛の青春タイムリープ曲の数々にはやはり興奮してしまいます。

 まだみんなが同じ音楽を効いてオリコンチャートを追いかけていた時代も、今となっては懐かしい思い出。カラオケにいけばデンモクで世代(年齢)・年代から曲を探してしまう人たちにとって、あーちん、なっち(夏帆)、みーぽん(木南晴夏)の3名が仲良くカラオケをしているシーンはずっと最高……。成人式後の同級生とのカラオケは、何周目の人生においても安心感がありました。

2023.03.11(土)
文=綿貫大介