ドラマオタクに刺さりまくる要素が満載

 これはドラマ好きを狙っている……と強く感じたのが、あーちん、みーぽん、なっちが小学生時代から活動していた「ドラマクラブ」。テレビが共通言語となり、それが翌日の教室の話題の中心となる時代を過ごしてきた人にとっては一定の共感があるのではないでしょうか。

 「ビーチボーイズ」(1997年放送)など各ドラマについてしっかりノートにまとめるあたりはかなりのマニアですが、mixiなどコミュニティで語り合う時代や、SNSでつぶやきあう時代も知っている私たちにとっては気持ちが十分にわかるものです。

 ある時期から「カタルシス」という言葉を使いたがったという小ネタもありましたが、90年代のドラマにおいて、野島伸司作品を評する際によくメディアが使っていた印象があるのでそれもツボでした。

 そして人生3周目のテレビ局回。ドラマが好きだからテレビ局に入ろうという安直な発想、好きです(考えたことある人いると思う)! 局内の裏事情や、ドラマがつくられる現場を説明的に見せてくれるのはドラマ好きにはたまらない展開でした。

 しかも、日テレの看板番組「24時間テレビ」や過去の日テレドラマのこともしっかり取り入れて作成してくれています(こういうネタ好きすぎる)。これには日テレドラマ、案外名作多いじゃんという気づきにもなり、配信で振り返りたくなりました。

 「花咲舞が黙ってない」(2014年、2015年放送)のドランクドラゴン塚地武雅さん、「Woman」(2013年放送)の臼田あさ美さん、「家売るオンナ」(2016年放送)の仲村トオルさんなどが本人役で登場するメタ構造も、ドラマにおけるカメオ出演のようで最高でした。

 また、5周目のパイロット回も秀逸。航空学校のシーンは連続テレビ小説「舞いあがれ!」(2022年後期放送)ですでに見てきた光景なので、まるで自分が人生2周目かのように勝手知ったるという部分がたくさんありました。

 朝ドラ内で手作りの練習用フライトシュミレーターが出てきたときは、嘘だろ? と思っていましたが、まさか本作にまで出てくるとは(航空学校あるあるなのか?)。

 しかもまりりん(水川あさみ)制作のダンボールで作られたフライトシュミレーターのクオリティ、「舞いあがれ!」の舞ちゃん超え。さすがまりりん、人生経験が違います。

女性同士のおしゃべりの巧みさ

 芸人としての観察力や想像力、お笑いをゴールに見据えた脚色で生み出される会話劇は、脚本家バカリズムの魅力の一つ。「架空OL日記」(2017年放送、2020年映画化)のOLたちの掛け合いもそうですが、バカリズム脚本ドラマの女性同士のおしゃべりは聞いていてとても心地が良いものです。

 これまでのドラマは「女同士で集まったら上辺の会話をしていて、陰で文句を言いあってる」という女vs女のテンプレが多くありましたが、そんなありがちなディスり合いは一切ありません。

 しかも、近年多いシスターフッドを強調した作品ともちょっと違う。どちらかというと、あまりストーリー展開に関わらない、意味のないセリフを積み重ねた会話が多いのです。

 それって「女の会話は話が長くてオチがない」ってことを揶揄してるのでは? なんて斜に構えなくて大丈夫。無駄話ってすごいコミュニケーションスキルなんです。だってくだらない話を振る人はもちろんですが、聞き手が会話を広げようとする力も大事になってくるんですから。

 ただ集まって上司の愚痴を言ったり、笑ったりしているだけなのにおもしろいのは、さりげないツッコミまでしっかり計算されているから。だからこそ、他愛もない内容なのにいちいち笑えます。

 近年のトーク番組の乱立の影響もあるのか、世の中では「まず結論を言って、簡潔に内容を」なんて言われたりしますが、効率のいい会話ってそんなに大事ですか?

 コロナ禍を経験して、とりとめのないおしゃべりの豊かさをちゃんと実感している人も多いと思います。実際、トークに結論もオチもなくてもいいんです。もちろん教訓なんていらないし意味を持たす必要もない。ただ楽しいおしゃべりができることも才能ですから。

2023.03.11(土)
文=綿貫大介