やりたくてしょうがない。誰にもやれと言われてないのにね

――お話を伺っていても、MEGUMIさんはとてもクレバーで、言葉が的確。ものごとを客観視することに長けておられます。ただ、演技をする上では、役に入り込まなければいけないのではないかと思いますが、苦しくはなかったですか?

 台本を読み、自分の役割を客観的に組み立てながら、あとは自分をギューッと役に集中させる。のぞみのような役は、自分を傷つけ、嫌な部分を引き出して、いろんな角度から見るみたいな作業を要しますから、結構キツかったですね。

 「セリフ覚えるの嫌だな」とか「こんな辛い思いをして」と苦しく思うこともありますが、でもやっぱり私は芝居をするのが好きなんですよね。(芝居)相手と、むき出しの心で向き合ったときに、化学反応が起きます。この仕事でしか味わえないエクスタシーみたいなものを得られます。

 また、演じることを通じて、いろんな人の人生を深く理解する作業を行います。それは、自分自身を広げてくれます。観てくださる方の背中を押したり、誰かの心を震わせるようなことに1ミリでもなっているのだとしたら、やっぱり楽しい仕事だなと思います。

――MEGUMIさんは、俳優のほかにも金沢でパンケーキの店「Cafeたもん」を経営していたり、プロデュース業を行ったり、「+コラボレート」でさまざまな方とコラボして発信したり。お一人とは思えない活動量。なぜそんなにエネルギッシュに多くのことができるのでしょう?

 エネルギー過多なんだと思います(笑)。単純にやりたくてしょうがない。誰にもやれと言われてないのにね。「人生にはエンディングがある」ということを割合強く意識しているので、そのためにはやりたいことをやっておかないと、という想いはすごくありますね。

――畑違いのことを始めるのに、怖さはないのでしょうか?

 初めて店をやるときはめちゃくちゃ怖かったです。周りの全員に反対されましたし、大きなお金を扱いますし、場所も他県だったので、めちゃくちゃ怖かったけれど、怖いことをしないと新しいものは生まれてこないんだな、というのがやりながらわかってきました。『零落』のプロデュースも怖かったですよ。私、何もできないのに……という思いもよぎったけれど、食らいついていくしかない。

 あとは、「やるって言っちゃったしなー」というのも毎回あります(笑)。やると言いながらやらないのはダサいから、あとに引けない。

――有言実行ですね。きっと人を説得することやプレゼンがお上手なんでしょうね。

 どうでしょう? お金を出していただく交渉って、相手も本気じゃないですか。なかなかイエスとは言ってもらえません。でも、こういうことを伝えればワクワクして出そうとしてくれるんだなとか、こういうときにこんな顔をするんだとか、普段できない経験をさせてもらっています。それは役者としても肥やしになっていますね。

2023.03.16(木)
文=黒瀬朋子
撮影=杉山拓也
ヘアメイク=エノモトマサノリ
スタイリスト=大浜瑛里那