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福岡は「冬のソナタ」が日本で人気になったとき、初めて訪れた場所

 釜山国際映画祭追っかけ日記番外編! 釜山でぜひ取材をしたかったが、なかなか時間が合わずお会いできなかったのが、この方。「冬のソナタ」のキム次長として日本でもお馴染みのクォン・ヘヒョ。

 最近でも「気象庁の人々:社内恋愛は予測不能?!」や「D.P. -脱走兵追跡官-」など、こんなところにも、というほど数々のドラマに出演していて、名脇役の印象があるが、ホン・サンス監督の『それから』をはじめ映画では主演作も多く、カンヌ、ベルリンなど海外の映画祭でも高く評価されている。

 マダムアヤコはヘヒョさんの変幻自在な演技も大好きだが、以前も釜山でお会いして、その誠実で率直な人柄に、さらにファンになってしまったのだ。

 マダムアヤコはあきらめない。追っかけの基本だな。そして朗報は年末にやってきた。日本でロケをした主演映画『福岡』の公開を記念して、舞台挨拶のため福岡の映画館に、クォン・ヘヒョさんがやってくるというではないか。

 そこで急遽、東京と福岡をオンラインで結んで、インタビューをお願いすることに。リモートではあったけれど、あの人懐っこい笑顔を全開にしつつ映画のことから夫婦共演のこと、おすすめグルメまで(食通としても知られているのだ)、どんな質問にもヘヒョさんは誠実に答えてくれた。


――映画『福岡』はとても楽しい、面白い映画でした。

クォン・ヘヒョ どうもありがとうございます。

――映画の中では、福岡で居酒屋(実在する酒房 野菊)を営む韓国人という設定ですが、ヘヒョさんは準備のために福岡に事前に長期滞在されたんでしょうか?

クォン・ヘヒョ いえ、前もって生活はしませんでしたが、私にとって福岡というのは馴染みのある土地なんです。2004年、「冬のソナタ」が日本で人気になったとき、初めて訪れたのが福岡だったんですよ。

 その後も何度か縁があって訪問しており、とても好きな、親しみのある街なんです。ですが今回の映画では、どのような意味合いで福岡という場所が登場して、どういう映画になって行くのか、撮影前にはまったく想像ができなかったんです。

――脚本も事前になく、監督から大まかな設定が渡されただけらしいですね。演じた役柄もヘヒョという名前で、福岡に長く住んでいるという設定です。

クォン・ヘヒョ そうなんです。だから心配でたまらなかったんですよ(笑)。日本語も自然な感じで話せないといけないので。

 福岡は韓国と近く、交流も深い土地ですし、この役のように長年住んでいる韓国人もたくさんいます。私の心配の種は、何より私が博多弁を喋れない、ということ。韓国語のセリフだけならいいのになあ、と撮影中ずっと思っていました(笑)。

2023.02.25(土)
文=石津文子