■山下達郎『RIDE ON TIME』(1980年)/マクセル
化粧品ほどではなかったものの、カセットテープも、音楽に近い商品性とあいまって、CMタイアップが賑やかなジャンルでした。マクセルに加えて、ソニー、TDK、そしてYMOとのタイアップで食い込んできたフジ(後のAXIA)が当時の四大ブランド。
さて、CMタイアップ普及による最大の成果は、山下達郎という才能を世に出したことではないかと、私は常々考えてきました。
伝説のバンド=シュガー・ベイブからソロになり、なかなかヒットに恵まれなかった才能を、一気に世に出すきっかけを作ったのが、マクセルのカセットテープCMとのタイアップだったのです。
驚くべきことにこのCM、今やテレビに出ないことで有名な山下達郎が自ら出演しています。夜明けの海に立って、銃を撃つ真似をする達郎本人。コピーは、こちらも曲名連動の「RIDE ON TIME」「いい音しか残れない。」。
自ら出演の覚悟も功を奏したのでしょう、このタイアップで達郎は時代の波に乗り(=RIDE ON TIME)、その「いい音」で、令和の今にまで残り続けたのです。
2023.02.05(日)
文=スージー鈴木