――今年2022年は、年初めの1月に、火村英生シリーズの最新刊『捜査線上の夕映え』が、刊行されました。そして、年末には、『このミステリーがすごい!2023年版』(宝島社)第3位をはじめ、4大ミステリランキング、すべてでベスト10入り! となりました。

「今作は、『別冊文藝春秋』で連載していて、完結したのは、2021年11月でしたから、厳密にいうと、今年の仕事ではないのですが、『捜査線上の夕映え』で始まった2022年、といえると思います」

――火村シリーズが始まって、ちょうど30年を迎えました。

「火村シリーズ第1作の『46番目の密室』が刊行されたのが、30年前の3月でしたからね」

――今作をお読みになった方は、わかると思いますが、涙なしには読めない感動的な本格推理小説となっています。横にも、そして縦にも、広がっていく小説です。横とは、火村とアリスのコンビの「瀬戸内海の島への旅」です。

「コロナ禍で、行動が制限されていましたから、私も含めて、旅に出たかったですからね」

普段とは、すこし違う印象の小説になった。

 
 

――冒頭1行目、「旅に出ることにした」という一文が、のちに心にしみます。この旅をすることによって、事件の関係者の「過去」をさかのぼっていくことになります。過去への旅が、縦への深まりです。美しい光景のなかで、名探偵の見せ場が展開されます。そして、あまり言えないのですが、これまでも火村シリーズを彩ってきた重要なキャラクターの背景も明かされていきます。

「連載として、小説を執筆しているうちに、人物たちの過去が繋がった、ということもありました。今回の作品は、まず最初に『こんな読後感を味わっていただきたい』というイメージがありまして、そのうえで書いた『謎解き小説』です。そういう意味では、普段とは、すこし違う印象を持たれるかもしれないですね」

――ミステリーとしては、「鉄壁のアリバイ」をどう崩していくか、という作品です。

2022.12.30(金)