「彼女は架空の存在ですが、江戸から明治へと変わる時代にはあり得る設定だと思います。特に武家の人は、家でやるべきことが決まっていたのが、明治になって、自分で“選ぶ”ことを強いられます。いい意味でも悪い意味でも選択肢ができたことで、どのように生きるかを、改めて考えなくてはならなくなった――そんな時代に、女性はどんな選択をしたのかが書きたかったんです。女性の生き方の普遍性について考えていたことが『葵のしずく』には出ていると思います」
おくやまきょうこ 1966年愛知県生まれ。2007年「平家蟹異聞」(『源平六花撰』所収)でオール讀物新人賞、18年『葵の残葉』で新田次郎文学賞受賞。近著に『やわ肌くらべ』。
2022.12.14(水)
文=「オール讀物」編集部