1年半ほど前から始まったというボイストレーニング

――『歌妖曲』は音楽劇でもあります。すでに歌稽古は始まっていますか?

 まだ台本があがる前、1年半ほど前に初めてボイストレーニングに入らせていただきました。今は最初の段階なので、身体をつくっていく作業といいますか、本当に基礎的な発声だったり、呼吸だったり、普段使わない身体の筋肉の部分を使えるようにしていくということをしています。身体が楽器だとしたら、楽器の強度を高めていくような……そういうところから始まりました。

 芝居の中での音楽なので、感情を使うというところを最終的にはもちろん目指していきます。舞台での歌唱は初めての経験ですし、昭和の歌謡界を舞台にしているから、音楽という要素はこの作品の中でもすごく大きな柱となるはずだと思っています。

 今日、共演者の皆さんと(会見で)初めて顔合わせをしたんですけど、この作品は連日2公演、週に9公演というところもあって、すごくヘビーみたいです。

 僕もどれくらいヘビーなことなのかまだ全然ピンときていなくて(苦笑)。だからこそ、(練習を)やってもやってもまだまだ安心できるところはないのかなと、今の段階では思っています。

――共演者の方々は中川さんより年上だったり、ベテランの方も多い印象です。皆さんとはどんなふうに、今後コミュニケーションを取っていきたいですか?

 僕自身これまで映像の現場が多かったので、こうしてカンパニーの皆さんと毎日顔を合わせて稽古を積み重ね、地方公演も含めて一緒に作品を作り上げていく経験が初めてなんです。今日が本当にスタートラインだと思っていて、実は皆さんとお会いするのも、すごく緊張していました(笑)。

 今日皆さんと顔を合わせて感じたのは、チームとしてのつながりは大事にしていきたいと思う一方で、桜木輝彦はすごく孤独な男なので、どこか僕自身も孤独に耐えなきゃいけないのかな、と思っています。すべてを共有しきれない部分が、きっと役にも大切に生きてくる時間だったりもするのかな、というか。

 心強い先輩方がたくさんいるので、不安なことは共有したいし、その中でもひとりでどこか、自分だけで耐えなければいけない時間も稽古中や本番中は必要なのかなと、感じました。

2022.10.30(日)
文=赤山恭子
撮影=今井知佑
ヘアメイク=佐鳥麻子(Vitamins)
スタイリスト=高橋 毅