この記事の連載

やっぱりあのキャラクターたちは生きているって思えた

――今年6月に連載を再開されましたが、お休みしていた2年間はどのように過ごしていたのでしょう。

 はたして再開できるのだろうかという不安があり、作品のことはむしろあまり考えなかったですね。

担当編集:前向きにネームを描いてみたりもしていましたが、その出口も見えなくなってましたよね。

 そうですね、すべてが迷宮入りみたいになってしまって、行き詰まってました。

――お休み中にTwitterを始めて、イラストなどをアップしていましたが、あのときはどういう心境だったのでしょう。

 SNSをするつもりはなかったんですけど、自分でも出口が見えないなか、読者の方もきっと心配してくださっているんだろうなと思って。こうなりますよ、みたいな答えは何も言えないけれども、とりあえず私は生きてますくらいの発信をしようと思ったんです。

 そのうち、古墳に詳しい方をフォローさせてもらったりして、自分で積極的に探さなくても、古墳の情報がタイムラインにどんどん流れてくることに感動して(笑)。近場でイベントがあるのを知って行ってみたら、これでエピソードが作れるかも!? とようやく出口が見えたんです。古墳を前にして、やっぱりあのキャラクターたちは生きているって思えたんですよね。

担当編集:あのとき浜谷さん、現場から興奮気味にLINEをくださったんですよね。

 2話分くらいのネームをすでに描いていたのですが、全部ボツにして描き直しました。結果的にですが、お休みしたことでいい出会いもあってよかったと思っています。

隣で起きているときめきを覗いているような気持ちになってほしい

――「少女漫画を描きたかった」とお話されていましたが、具体的にはどんな少女漫画をイメージされているのでしょう。

 少女漫画ってときめきが大事だとすごく思うんですけど、登場人物が自分にとっても読者さんにとっても身近であってほしいというか、隣で本当に起きているときめきを覗いているような気持ちになってほしいんです。

 作者である私の存在はなるべく感じてほしくなくて、目の前で起きている出来事を私が自動筆記しているくらいの、影武者みたいに描けたらいいなとは思っています。

憧れの漫画家はいくえみ綾

――浜谷さんご自身は、どんな少女漫画の影響を受けてきましたか?

 1巻で帯にコメントを寄せてくださった、いくえみ綾さんは、私が中学生のときに別冊マーガレットで初めて絵を見た瞬間にすごい! と思った憧れの方です。日常的な物語のなかにときめきもたくさんあって、人物描写もリアルでしびれましたね。

担当編集:お休みしているときに、励みになることがあったんですよね。一昨年の12月に『ケトル』という雑誌でいくえみさんの特集をしていて、一問一答のコーナーがあったんです。そこで、今追いかけている作品として、「やま恋」のタイトルを出してくださっていて。

 Twitterのフォロワーさんが教えてくださったんです。ちょうどお休み中だったのですが、今までのマイナスがすべて吹き飛びましたね。

――この作品を追いかけている人だけでなく、新装版で初めて手に取る方もいると思います。改めてどんなところを楽しんでほしいですか。

 穂乃香がいろんな経験を積んで、どこにたどり着くのかは私にもわからない部分があるので、楽しみながら描いています。古墳にも恋にもほぼ初めて接する穂乃香と歩調を合わせて、一緒に踏み込んでいく感じで読んでもらえたら嬉しいですね。

浜谷みお(はまたに・みお)

漫画家。初の連載作となった「やまとは恋のまほろば」は、第10回an・anマンガ大賞、第23回文化庁メディア芸術マンガ部門「審査委員会推薦作品」選出など大きな話題に。2022年6月から「文春オンライン」にて既刊1巻から連載をスタート。

浜谷みお『やまとは恋のまほろば 新装版』

792円(税込)
1、2巻が現在発売中、3巻は11/10発売予定。
詳細はこちら
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784160901216

次の話を読む【マンガ】「やまとは恋のまほろば」 ミステリアスな同級生とチャラい先輩 ふたりのイケメンとの恋の行方は?

2022.10.14(金)
文=兵藤育子