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 作・演出・出演をつとめるサラリーマンたちの人情コメディ、『サラリーマンナイトフィーバー』で5年ぶりに俳優として舞台に立つ錦織一清さん。

 最近では、若い世代の俳優やアイドルがSNS等で少年隊の動画を薦めたことで、新たに“沼”に落ちるファンも増えている。構想20年という舞台への思いを聞いた前編に続き、後編では「少年隊」という肩書きに抱かれるイメージや、年齢を重ねて得たもの、そして57歳の錦織さんの夢を聞いた。(全2回の2回目。前編を読む)


――2020年、55歳のときにジャニーズ事務所から独立されました。少年隊という肩書きに助けられた部分や、かえって肩書きに縛られる部分はありましたか?

錦織 「少年隊」という名前のおかげで、今でも本当の年齢を言うとびっくりされることが多いです。この名前が邪魔したことは別にないんですけど、若く思われるだけに、難しい話になると「こいつは分かってないだろうな」って思われてしまうことはあるかな。僕も背広着てたら、それなりの年齢に見えるんですけど、普段はふざけた格好してるからね。

 今回の『サラリーマンナイトフィーバー』でも、僕が書いていないと思っている人がいるんですよ! コメディの部分だけ僕が書いていて、親子や夫婦のすれちがい、人間の見栄のような真面目なパートは、仕事をご一緒することが多い、脚本家の羽原大介さんが書いてると思われている。僕も、もう「ああ、そうだよ」って言ってます(笑)。

――再演にあたり、スキーのゴーグルを扱う会社の社長役で5年ぶりに舞台に出演します。外回りの営業に励む部下のサラリーマン以上に個性的な人物で、社長世代にもなじみ深いシナトラの名曲や、軽やかなダンスを披露されました。何か心境の変化があったのでしょうか。

錦織 出てくれって言われたから出てるだけですよ。結婚式と舞台はお誘いがなきゃ行けないじゃないですか(笑)。5年間出なかったのも、舞台は出演依頼がないと出られないからで。

 僕自身、演出家としてすごく理解できるのですが、舞台に立たないのは僕や誰かの意思ではないんですよね。どういうことかというと、50代前半って役者として一番難しい時期なんです。年齢は重ねているのだけど、円熟味や説得力がまだ足りない面がある。だから今回、僕は社長役をやらせていただきますけど、やんちゃな社長として見ていただけるとありがたいと思ってるんですよ。

 それと、自分で作った舞台に自分が出たいという欲求がないんです。他の舞台と違って、自分で書いた舞台はやっぱりふざけにくいですし。以前出演した舞台をDVDで見返すと、ふざけて、やらかしまくっていて恥ずかしいんです(笑)。

2022.10.04(火)
文=石津文子