スゴすぎて引いた! 少年隊デビュー時の衝撃
人間、予想外にスゴイものを見たとき、反応は2パターンである。その超人芸のトリコになるか、心が追いつかず戸惑うか――。
少年隊の場合、私は後者だった。
1985年、デビュー曲「仮面舞踏会」で彼らを見たときの衝撃は忘れない。
飛ぶ(跳ぶではない。もはや「飛ぶ」)。回る。しゃがむ! そんな大忙しのダンスをバシリと揃えて見せてくる3人。
背景にキラキラと「ハイクオリティエンタテイメーンッ!」と飾り文字が出てくる感じの存在感に「新種が出た」と仰天した。
「すご過ぎて、わかり合える気がしない」と、一体どの目線で少年隊との距離を測っているのだとツッコみたくなるような理由で、たじろいでしまったのだ。
UFOと遭遇したが「幻だべ!」と、ぶんぶん頭を振り作業に戻る畑のおじさんと同じレベルの反応である。
そして戸惑い100%のまま、超名曲「デカメロン伝説」「stripe blue」などを、遠い世界のイケメンフェスティバルとして、流し聞きで済ませていたのだ。嗚呼、お馬鹿!
ところが、UFOに遭遇したおじさん状態からグッと彼らとの距離が縮まった一曲があった。それが「君だけに」である。
聖なる指パッチンからの、カッちゃんの歌い出し。
「君だけに ただ 君だけに ah めぐり逢うために……」
静寂に響く甘く包容力のある歌唱力にビックリしたのだ。
何? このジェントルマン・エキスプレスな雰囲気。むちゃくちゃ上手ではないか。
そして、ひらりひらりと踊る、いや「舞う」ダンスに驚いた。優雅。控えめに言って優雅!
当時はまだ静かな曲で踊る文化があまり浸透していなかったこともあり、どんな曲でもイメージを格上げするダンスを魅せる彼らに尊敬を覚えた。
当時男性アイドルについて「好きか嫌いか」の二極化だった私。少年隊の「君だけに」は、そういう感情とはまた別で、感動せざるを得ないプレイゾーンがあると教えてくれたのである。
2021.02.19(金)
文=田中 稲