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 サラリーマンたちの人情コメディ、舞台『サラリーマンナイトフィーバー』で作・演出を手掛ける錦織一清さん。5年ぶりに自らが舞台出演することも話題だ。少年隊として一世を風靡し、華やかな芸能界で活躍する彼が、なぜサラリーマンとその家族の人情喜劇を作るに至ったのか。下町育ちらしいキレの良い言葉で、構想20年の舞台について語った。(全2回の1回目。後編を読む)


――脚本、演出、出演をされる『サラリーマンナイトフィーバー』は、会社のために身を粉にして働くサラリーマンたちのコメディです。古原靖久さん演じる主人公の広瀬は、会社ではなかなか営業成績を達成することができず、無理して買ったマンションのローン返済に追われ……と、なかなか人生がうまくいきません。なぜサラリーマンの世界を舞台に選んだのですか?

錦織 40歳を過ぎた頃から考えるようになったのは、自分がやっている芝居という仕事は社会貢献になっているのかな、っていうことなんです。人生も折り返しに入って、残りの時間で芝居を通じて世の中に少しでも貢献するためには、舞台装置に趣向を凝らした大スペクタクルではなく、普通の人の等身大の話を作りたいと思いました。

 構想のきっかけとなったのは、30代の頃、僕の舞台を見に来てくれた同級生たちから、「俺たちサラリーマンが見れる演劇ってないんだよな」って言われたこと。実際に、少し前まで帝国劇場や日生劇場といった大劇場では、女優さんの座長芝居やミュージカルが主流だったんです。

 僕もそういった舞台に出演させていただいていましたが、有楽町で僕らがお芝居をやっている、そのすぐ隣の新橋ではサラリーマンが働いてる、この対比が面白いなと。すぐ近くにいる彼らに見に来てもらえる芝居をと思ったんですが、タイトルは駄洒落みたいになりましたね(笑)。

――錦織さんはエンターテイナーとして多大な貢献をされてきたと思うのですが、そういったお考えがあったんですね。

2022.10.04(火)
文=石津文子