この記事の連載

◆4位『きつねとたぬきといいなずけ』トキワセイイチ

 平凡な会社員・田中のもとに、ある日突然やって来た言葉を話す子ぎつねと子だぬき。かつて彼らの親を助けた田中は「大恩人」で、2匹は「田中の許嫁」だと言うのです。驚きながらもてなすうちに、田中はときどき押しかけてくる彼らと親しくなっていき──。

 舌足らずで生意気ではあるけれど、ポジティブな好奇心を前面に出して話しかけてくる子ぎつねたちのかわいらしさがたまりません。高尾山から電車に乗り、未知なる世界に向かってひた走るきつねたちの姿には純真なときめきがいっぱい。動物界と人間界が並行して語られるなか、人間が創り出した文明社会と自然の理との距離感にふと思いを馳せてしまいます。不思議な説得力を帯びたやさしいファンタジー。

「ファンタジックと日常がかわいい絵柄で溶け合う。加えてひと匙の“闇”が潜むのが魅力」(司書 三崎絵美さん)

「キャラクターと現実のバランスが心地よい。永遠に続いてほしい」(マンガ家 雲田はるこさん)

『きつねとたぬきといいなずけ』トキワセイイチ

マッグガーデン 各935円 既刊2巻

三崎絵美(みさき・えみ)
司書

マンガとサブカルチャーの専門図書館「明治大学米沢嘉博記念図書館」で司書として勤務。図書館をテーマにした同人誌即売会の開催や同人誌のレビューなども。

雲田はるこ(くもた・はるこ)
マンガ家

『昭和元禄落語心中』(講談社)はアニメやドラマ化もされ、2017年に手塚治虫文化賞新生賞を受賞。『いとしの猫っ毛』(リブレ)『新宿ラッキーホール』(祥伝社)など。

次の話を読む第1回「CREA夜ふかしマンガ大賞」 2022年のベスト10発表!〈前篇〉 受賞作5位から10位を一挙に紹介
CREA夜ふかしマンガ大賞
10位~1位までを発表!

2022.09.18(日)
Text=Kozue Aou
Photographs=Ichisei Hiramatsu

CREA 2022年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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「CREA」2022年秋号は「夜ふかしマンガ」特集です。慌ただしい日々を過ごしていると、眠りにつく前のひと時くらい、すべてを忘れてマンガの世界に没頭したくなりますよね。そこで、時代をあぶりだす社会派から、大人の胸キュン、話題の新人作品まで、ぜひ読んで欲しい名作を集めた「夜ふかしマンガ大賞」をお届けします! 今年最注目の第一位は――!?