この記事の連載

 今、夜な夜なマンガに夢中になっている大人が急増中。ある電子書店のデータによれば、マンガ作品がよく読まれるのは22時以降、ピークは深夜0時だそう。※

 眠りにつく前のひとときに、時代をあぶりだす社会派から大人の胸キュン、コッソリ読みたい一冊まで……。日中のあれこれを忘れさせ、新しい世界に連れ出してくれる作品に、CREA秋号「マンガ」特集では「夜ふかしマンガ大賞」を贈りました。

 今回は、オールタイムの名作から選ぶ11の部門賞のうち〈お仕事部門〉8作品を発表します。パンサー向井さん推薦の4作品とマンガ好きの推薦者の皆さんおすすめの4作品を読めば、「仕事、頑張ろう!」とやる気が漲るはず。

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» 「夜ふかしマンガ大賞」1位~4位はこちら
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CREA夜ふかしマンガ大賞とは…

マンガ好きの35名の推薦者とCREA編集部員の投票により選ばれた「思わず、夜ふかしして読みたくなる」そして、「今、CREA読者に本当におすすめしたい」作品に贈る賞。大賞は、2021年7月~22年6月末までに単行本の新刊が発売された(ただし、合計5巻以内)、もしくは、雑誌などに最新話が発表された作品から選出。各部門賞は、作品発表の時期や巻数に制限はありません。


パンサー向井さんが推薦! 頑張る姿にやる気が漲る4作品

 僕自身の仕事が才能で語られがちなこともあって“才能”に翻弄される人たちの物語に弱いんです。『ブルーピリオド』と『ひゃくえむ。』、あと『左ききのエレン』『【推しの子】』は、いわゆるお仕事マンガではないですが、才能を持つ人とない人、それぞれの情熱や葛藤が描かれていて、読むと「仕事、頑張ろう!」とやる気が漲ってきます。

 『ブルーピリオド』の主人公・八虎は、世間的にはスペック高めだけど、実は自分が空っぽなことに気付いていて、やっと美術という夢中になれるものと出合うけれど、そこで自分が一番になれる才能がないことも分かってる。そんな彼の苦悩は自分とすごく重なるし、天才の世田介に「なんでもできるやつが美術の世界に来んなよ」みたいなことを言われて、僕も悔しくて。でも、結局「俺の絵で殺す」=自分の仕事で納得させるしかないんだと奮い立つシーンには共感しかなくて、スマホの待ち受けにして日々自分を奮い立たせています(笑)。実は、天才に見える側の人の描き方も単純ではなく、誰よりも好きで努力している人として描いている点も好きですね。

 『ひゃくえむ。』の主人公・トガシも、小さい頃から走るのが速かったけれど、自分の才能が右肩下がりであることも感じていて。もう一番にはなれないと分かっているのに、なんで走ってるんだろう? と苦悩する。僕自身、大好きなお笑いを仕事にして、こんなに幸せなことはないはずなのに「なんでこんなに苦しいんだろう?」「自分より才能がある人だらけの世界で、なんで続けてるんだろう?」という悩みは常に抱えているだけに「一瞬のワクワクを知ってしまったら、どんなに苦しくてもやめられない」というトガシの出した答えにすごく共感しました。

 この作品は「才能を持たない人間がどう闘うか」を描いたマンガでもあって。特に好きなのが、同じ陸上部の女の子がすごい走りをするシーン。彼女はとにかく走るのが好きで毎日走ってたから“日常の差”で勝った。「好き」という力が才能を凌駕する瞬間がある。才能を持たない人間が、これほど勇気をもらえるシーンは他にない。どんな仕事でも、頑張る人には必ず響くと思います。(向井さん)

◆『ブルーピリオド』山口つばさ

仕事の悩みは仕事で解決するしかない

 高校生の矢口八虎は成績優秀でスクールカースト上位の充実した日々を送りながら、どこか虚無的な焦燥感を感じていた。そんなある日、一枚の絵に心奪われ、美しくも厳しい美術の世界へと身を投じていく。

「自分に特別な才能がないことを分かっている人間の闘い方が描かれていて、読むたびに自分もまだできる! と奮い立てるんです」(向井さん)

『ブルーピリオド』山口つばさ

講談社 693〜748円 既刊12巻

◆『ひゃくえむ。』新装版 魚豊

なぜ働いているのか? 答えを探して

 生まれつき足が速く、走ることで友達も自分の居場所も勝者の座も手に入れてきたトガシ。しかし小6での、小宮との競走によって初めて敗北の恐怖と同時に本気の昂奮を味わう。

「ずっと他人の評価の中で走ってきたトガシが、最後に自分が満足するためだけに走る姿に、仕事もその両輪があってこそ楽しめると気付かされます」(向井さん)

『ひゃくえむ。』新装版 魚豊

講談社 各1,320円 上下巻

◆『左ききのエレン』かっぴー 原作/nifuni 作画

天才になりたかった凡才に捧ぐ

 朝倉光一は、いつか有名になることを夢見ている大手広告代理店勤務の若手デザイナー。多くの天才と出会う中で自分が凡人であることを痛感し、苦悩する光一の姿に心を抉られる。

『左ききのエレン』かっぴー 原作/nifuni 作画

集英社 484~506円 既刊21巻

◆『【推しの子】』赤坂アカ 原作/横槍メンゴ 作画

大事なのは努力と才能だけじゃない?

 ゴローは自身の推しアイドル・星野アイの子ども・アクアに転生。双子の妹ルビーとともに芸能界で生きることになる。アイドルを目指す女の子たちの苦悩と成長、芸能界の光と闇を描く。

『【推しの子】』赤坂アカ 原作/横槍メンゴ 作画

集英社 各693円 既刊8巻

向井 慧(むかい・さとし)[パンサー]
お笑い芸人

お笑いトリオ・パンサーのメンバーとして活躍。ラジオ好きとしても知られ、今春スタートの「パンサー向井の#ふらっと」(TBSラジオ)や、「#むかいの喋り方」(CBCラジオ)など、レギュラー多数。

2022.10.16(日)
Text=Keiko Iguchi

CREA 2022年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

「夜ふかしマンガ大賞」発表!

CREA 2022年秋号

「夜ふかしマンガ大賞」発表!

特別定価930円

「CREA」2022年秋号は「夜ふかしマンガ」特集です。慌ただしい日々を過ごしていると、眠りにつく前のひと時くらい、すべてを忘れてマンガの世界に没頭したくなりますよね。そこで、時代をあぶりだす社会派から、大人の胸キュン、話題の新人作品まで、ぜひ読んで欲しい名作を集めた「夜ふかしマンガ大賞」をお届けします! 今年最注目の第一位は――!?