この記事の連載
今、夜な夜なマンガに夢中になっている大人が急増中。ある電子書店のデータによれば、マンガ作品がよく読まれるのは22時以降、ピークは深夜0時だそう。※
眠りにつく前のひとときに、時代をあぶりだす社会派から大人の胸キュン、コッソリ読みたい一冊まで……。日中のあれこれを忘れさせ、新しい世界に連れ出してくれる作品に、CREA秋号「マンガ」特集では「夜ふかしマンガ大賞」を贈りました。
今回は、オールタイムの名作から選ぶ11の部門賞のうち、今回は、こんな時代だからこそ読んでおきたい、戦争について考えさせてくれる〈戦争部門〉7作品を発表します。
22時から明け方まで、ページをめくる手が止まらない―!?
※ 総合電子書籍ストア「ブックライブ」で、ストア利用(書籍購入)が一番多い時間帯。
» 「夜ふかしマンガ大賞」1位~4位はこちら
» 「夜ふかしマンガ大賞」5位~10位はこちら
» 「夜ふかしマンガ大賞」〈番外篇〉ノミネート8作品はこちら
» 「夜ふかしマンガ大賞」〈女の人生部門〉13作品はこちら
» 「夜ふかしマンガ大賞」〈お仕事部門〉8作品はこちら
» 「夜ふかしマンガ大賞」〈胸キュン部門〉9作品はこちら
» 「夜ふかしマンガ大賞」〈家族とは? 部門〉6作品はこちら
» 「夜ふかしマンガ大賞」〈長編部門〉13作品はこちら
CREA夜ふかしマンガ大賞とは…
マンガ好きの35名の推薦者とCREA編集部員の投票により選ばれた「思わず、夜ふかしして読みたくなる」そして、「今、CREA読者に本当におすすめしたい」作品に贈る賞。大賞は、2021年7月~22年6月末までに単行本の新刊が発売された(ただし、合計5巻以内)、もしくは、雑誌などに最新話が発表された作品から選出。各部門賞は、作品発表の時期や巻数に制限はありません。
今だから、読む。私たちの戦争
ロシアのウクライナ侵攻が始まったとき、ノーベル文学賞受賞作家のアレクシエーヴィチは、今回の戦争は「テレビと冷蔵庫の闘い」だと評しました。テレビで防衛だの正義だのと世論操作はできても、冷蔵庫が空っぽになれば民衆も戦争の無意味さに気づくだろうということでしょう。深く首肯しました。と同時に、自分にとって遠かった戦争が、これほど身近に感じられるようになる日が来るとは。見ようによっては、いまは戦前なのです。
戦争は、軍部や権力者たちが発信するデータで眺めても分かりません。生活インフラが脅かされ、食料や物資が不足し、それまでの当たり前が敵わなくなれば何が起きるかは、その時代を生きた人たちの生活実感にこそリアルがあります。戦争を美化せず生活者の本音を雄弁に語る戦争マンガは、読み継がなくてはいけない必読書。何より見習うべきは、厳しい迫害や言論統制、貧しい物資と死の恐怖に苦しめられながらも、平和や未来を夢見ることを止めなかった登場人物たちの、揺るぎない人間らしさではないかと思うのです。(三浦さん)
◆『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 原作/小梅けいと 作画/速水螺旋人 監修
人類史上最悪と呼ばれた独ソ戦
スターリン体制下のソ連では女性も兵士となり、前線で戦った。経血が乾いてガラスのように刺さるズボン、自分よりずっと大柄な男性負傷兵の救出。女性の身体が戦闘に向いていない現実を、従軍した女性はもちろん銃後にいる女性や子どもが舐めた辛酸を、静かな怒りとともに浮かび上がらせている。
『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 原作/小梅けいと 作画/速水螺旋人 監修
KADOKAWA 各1,100円 全3巻
◆『草 日本軍「慰安婦」のリビング・ヒストリー』キム・ジェンドリ・グムスク/都築寿美枝・李昤京 訳
「慰安所」は戦時性暴力の象徴
日本軍が日中戦争の時代から推し進め、アジア諸国に拡大させた慰安婦制度。本書はその被害者のひとり李玉善さんの壮絶な半生の聞き取りから生まれた。濃い墨色で描かれる光景に、被害者の痛みを想う。
『草 日本軍「慰安婦」のリビング・ヒストリー』キム・ジェンドリ・グムスク/都築寿美枝・李昤京 訳
ころから 3,300円 全1巻
2022.10.20(木)
Text=Asako Miura