「サステナビリティ」コースの6皿。生き生きとした素材に驚く
コースに登場するのはアミューズからデザートまで全6品。そのすべてに、食の未来に対して意識を高く掲げる生産者へのエールが送られている。もちろん、「アルマーニ/リストランテ」ならではの美意識も同居するめくるめく世界観だ。
◆高農園のサラダ
こぢんまりとしたサラダに使われるのは、なんと20種類以上の野菜。その日に届いた一期一会の野菜が使われる。しかもそれぞれの野菜の味を最大限に引き出すため、フレッシュのまま、グリル、スチームなどひとつひとつ手法を替えるというから、想像を絶する手間のかけようだ。
野菜が作られている「NOTO高農園」は、化学肥料を使わないのはもちろんのこと、畑に無理をさせず、輪作で、供給以上の量も作らないという考え方。
仕上げには、テーブルにてパセリをたっぷりと使ったサルサヴェルデ(緑のソース)を。お箸で絡めながら食べることで、より、ひとつひとつの野菜の質感が鮮やかに感じられるから不思議だ。
◆スモークハマチ
今回のテーマは「北陸」ということで、福井県のプライドフィッシュであるハマチが登場。スモークで香りを付け、旨みを凝縮したハマチは、薄く切ったラディッシュで巻く。トップには揚げたポロねぎをたっぷりと。ソースは南米のセビーチェ風で、鮮烈な酸味が魚の旨みと重なる。暑くなってくる季節に嬉しい、食欲を刺激する前菜だ。
また、最近はサイズが小さかったり、食用での需要が少ない魚「未利用魚」が話題だが、このハマチは、そもそもそのような未利用魚をなるべく獲らないように工夫した定置網で水揚げされたもの。高い志の漁師を応援する一品。
◆スナップえんどうのリゾット
日本一の米どころ・新潟も、日本人の米離れに頭を悩ませているという。今回、自身もイタリア人であるカルミネシェフがもちもちと甘い特徴を持つ日本米を見事なアルデンテのリゾットに仕上げたことは、国内にあまたあるイタリアンのシェフに衝撃を与えるはず。
とはいえ、やはり粘り気のつよい日本の米をリゾットにするのは、研究に数カ月を要した。イタリア米のようにすっきりと、絶妙に火を入れ、とはいえ日本米らしい米の甘みが感じられるリゾットは絶品だ。
ほかの料理から出た野菜の根や端を使ったスープで炊き上げ、完全にストレスフリーな環境で育てられた卵を低温で長時間火入れし、とろりと。ナポリ伝統の「パスタ エ ピゼッリ」にインスピレーションを得たスナップエンドウのプチプチ感も楽しんで。
◆鰆の炭火焼き クレソンソース
鰆も北陸・福井のプライドフィッシュ。火入れに定評のあるシェフだが、こちらは炭火で焼いてから藁焼きで香りを付ける。日本古来のワイルドな調理法ながら、しっとりとレアな焼き上がりはさすがだ。
ソースは、アスパラガスの皮やほかの料理から出た野菜の切れ端からとっただしにクレソン、ポロねぎ、エシャロットを合わせて。こちらも香り豊かな春から初夏にかけてのご馳走。
◆とみつ金時
ひと皿目のデザートは、福井県の農業法人フィールドワークスで作られている「とみつ金時」が主役。形や大きさが理由で出荷できない危険のある「とみつ金時」で作ったペーストをアイスクリームにしている。ベルガモットのシャーベットと合わせ、個性的で華やかな甘さに。
◆いちご 酒粕
メインのデザートは石川県産の紅ほっぺを使ったもの。内側は形などを理由に出荷できないいちごのピューレを使ったシャーベットと、福井県のお酒「黒龍」の酒粕のジェラートを合わせている。
いちごは石川県の「いちごファームHakusan」から。マイクロ水力発電による電力を使って運営し、地域との共生を図っている。また、多くの酒蔵が日本酒の副産物である酒粕を廃棄する中、「黒龍」を造る黒龍酒蔵では、廃棄を防ぐために酒粕を蒸留した焼酎造りを試みるなど、有効活用に取り組んでいる。
カルミネシェフがこのコースを完成させるまでに、数カ月の準備が必要だったというのも頷ける、サステナビリティに対する考え方と味、そして美しさが同居するコース。生産者を探し、出合った食材に合う調理法を探り、ブランドとして納得のいくひと皿に仕上げる。本国のジョルジオ・アルマーニ氏の環境問題などに向ける情熱にも後押しされ、叶ったコースをぜひ体験してしてほしい。
アルマーニ / リストランテ
所在地 東京都中央区銀座5-5-4
電話番号 03-6274-7005
営業時間 11:30~15:00(L.O.14:00)、18:00~23:00(L.O.20:00)
定休日 月曜
※コース「サステナビリティ」はランチ・ディナーで提供可能。前日までに要予約。7月頃までの限定コース。
https://www.armani.com/ja-jp
2022.05.26(木)
文=CREA編集部