内定辞退を迷わなかった

 アシンメトリーなデザインが目を惹くワンピースは、自前の衣装。本人の言葉を借りると「変わった服」が好きで、それが大きなアイデンティティにもなっている。

「子どものころから美術館でアートに触れることが好きで、ファッションも芸術として捉えているので、どうしても変わった服ばかりに目が向いてしまいます(笑)。

 SNSで私服を出すようになったばかりのころは批判的なコメントも多くて、すごく落ち込んでいました。でも、それ以上に私らしい表現を褒めてくれる方がたくさんいて。一部の批判コメよりも、応援の声に目を向けないともったいないなと。それに気づいてからは、メンタルが落ちることはほとんどなくなりました」

 そもそも景井さんがTikTokクリエイターとして生きていく決断をしたのは、専門学校卒業間近の冬。地元でウエディングドレス会社への就職が決まっていたが、友人から誘われTikTokを始めると、わずか3回目の投稿となるメイク動画でフォロワーが10万人に! そんな彼女のスター性を芸能事務所が見逃すはずもなく、スカウトの話が連日舞い込んだ。

「30社くらいの事務所さんから声をかけていただいたので、ずっと胸の内に秘めていた芸能界への憧れに火がついてしまいました。『目の前にチャンスがあるのに、やらない選択肢ある?』と思って、迷わずに決断し、両親に無断で内定先に辞退の連絡をしました。すごく怒られましたけど、土下座しながら頼み込んで、2年頑張ってダメなら諦めることを条件にクリエイターとして生きることを認めてもらいました。我ながらナイスな決断だったと思います(笑)」

素顔は山で育った“自然児”

 日本一のTikTokクリエイターになっただけでなく、最近ではファッション誌のモデルや女優としても活躍の場を広げている。

「やっぱり表現することが好きで、昨年は連続ドラマに出演させていただけてお芝居の楽しさにハマってしまいました。また、バラエティ番組で熱湯風呂や顔面ストッキングに挑戦してみたい気持ちもあります。ずっと追求してきた『分かりやすい笑い』の最高峰が、そこにあるのではないかと……!」

 身体を張った企画もウェルカム。クールビューティな顔立ちからは想像できない親近感こそ、景井さんの最大の魅力に違いない。

「小さいころは山で木登りしていましたし、祖父の家ではイノシシやヤギを飼っていたので、結構内面はワイルドなんです。最近は、犬を飼い始めたことで憧れていた“洗練された東京の暮らし”を満喫しています(笑)。気取ったキャラづくりをしてもボロが出てしまうので、これからも飾らずに自分をさらけ出していきたいです」

Their seeds

自分らしさを表現するためにSNSの世界を迷わず進む。自らの手で、妥協することなく。


おうちにこもる日のTime Schedule

完全なインドア派&夜型で家から出ない日も多い。動画は19時に投稿し、ごはんを食べながらフォロワーの反応を確認するのが至福の時間。

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景井ひな(かげい・ひな)

1999年生まれ、熊本県出身。2019年3月にTikTokを本格始動。わずか9カ月で100万人フォロワーを達成。女性日本一のフォロワー数を誇る。モデルや女優など活動の幅を広げている。

あたらしい暮らし
楽しい暮らし

2022.04.19(火)
Text=Satoshi Asahara
Photographs=Yosuke Suzuki(Erz)

CREA 2022年春号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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「CREA」2022年春号の特集は、「あたらしい暮らし 楽しい暮らし」。激動する時代の中“楽しい暮らしの正解”はなくて、きっとそれは百人百様。でも人生100年時代となり、キャリアがマルチステージ化していくと言われる世界を、自分らしく楽しむためには、自分の中に「種」を持っていたい。今すぐじゃなくても、ちょっと先の未来に芽が出るような、小さくても、強い種を――。